建築物を発注するときに、入札を利用して依頼先の建設業者を比較検討することがあります。その際に発注者に提示する価格の基礎を算定するのが「建築積算士」です。複雑な要素をふまえて計算・算出しなくてはならない仕事であるため、専門性の高い資格であるといえます。
土木工事・建設工事において、発注者や施工業者との対応を担当するのは、土木施工管理技士の仕事です。ですから、土木施工管理技士を目指している方は、建築積算士の役割に関する理解を深めておくことは大切ですし、また、建築積算士の資格を取得することで、さらなるキャリアアップにつながります。
建築積算士は、入札における提示価格の基礎の算定をおこないます。公共事業が発注されるときに公示される工事概要をもとに、適正な価格を算出します。仮に受注できたとしても、提示価格が適正とはいえないようなものであれば、利益を出すのは非常に困難です。そうならないためにも、適切な価格を算出する必要があります。
民間の事業者が発注者であっても、複数の建設会社を比較するのが一般的です。建築会社にとって、建築積算士の綿密な算出業務がいかに重要なものであるかがわかります。
提示する価格の基礎データを算出するためには、設計図書や工事コストの構成や、建築資材の相場などに関する知識が求められます。さらに、図面を読むスキルも必要不可欠です。
工事コストについてですが、ひとくちにコストといっても、その規模は工事によってさまざまです。数千万円規模の仕事もありますが、数千億規模にいたることもあります。いずれの場合も、建築図をベースとした設計図・仕様書に従って、デザインや使用される材料に合わせて数量を算出していく作業です。その際、工期や工程も計算に入れつつ、適正な工事費用を算出することが求められます。
建築積算士の資格を得るには、公益社団法人日本建築積算協会が実施している試験を受験・合格することが条件です。実務経験などの特別な受験資格は設けられていません。年齢が17歳以上であれば、だれでも受験が可能です。
試験に合格するには、設計図や建築図面などを理解するためのスキル・知識が求められます。これまでに建築業界に携わった経験がない方は、図面になじみがないので、難しく感じられるでしょう。
合格するための勉強方法について、独学の場合は指定のガイドブックを使用するのが一般的。通学できる場合は、基礎的な知識を習得するためにも、建築に関連する学部で学ぶのがおすすめです。あるいは、経験を積むことで準備したいのであれば、設計事務所で図面を読むためのスキルを身につけていくという方法もあります。
一次試験と二次試験があります。前者は10月に、そして後者は、その翌年の1月に毎年実施されています。公益社団法人日本建築積算協会発行による建築積算士ガイドブックに沿った内容の問題が出されます。
参照元:公益社団法人日本建築積算協会(https://www.bsij.or.jp/news/2022sekisan_shiken/index.html)
二次試験の合格率は、年によって一定の差が生じるものの、およそ6割前後で推移しています(※1)。たとえば、2020年1月におこなわれた二次試験の合格率は、やや高めで69.3%でした。644人が受験し、うち446人が合格しています(※2)。
(※1)(pdf)参照元:公益社団法人日本建築積算協会(https://www.bsij.or.jp/pdf/info_20211201.pdf)
(※2)(pdf)参照元:公益社団法人日本建築積算協会(https://www.bsij.or.jp/pdf/info_20220301.pdf)
530万円から800万円ほどの年収を見込めるでしょう。また、規定の給与のほかに、資格手当が支給されるケースもあります。ただし、さまざまな条件や就職先、それぞれのケースごとに年収にはかなりのバラつきがあるので、ひとつの目安として参考にしてみてください。
参照元:建設転職ナビ(https://kensetsutenshokunavi.jp/c/content/job_guide/job_guide_22/)
建設業界において、建築積算士は大切な役割を担う存在です。そのため、転職をする場合なども、資格があることで選択肢の幅が広がります。おすすめの働き先のひとつとしてゼネコンの積算部があげられます。また、ディベロッパーとして活躍できるチャンスもあるでしょう。
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