建設業を代表する建築と土木。業界の外の人にとって、これらの違いはどこにあるのか、イメージできない人もいるかもしれません。また、建築と土木、いずれの現場においても、施工管理を行う監督役が重要な仕事を行なっています。そこでまずは、建設施工管理の業務について、くわしくみてみましょう。
「建築基準法」によると、「建築」という仕事の定義は、建築物を新築したり増築すること、また移転させたりする内容を指します。この建築物は、屋根や柱、壁を有する工作物であり、また外回りに設置される塀や門、エクステリアを含んでいます。建築物には、もちろん住宅だけではなく、企業の事務所や店舗、倉庫、興業場などの施設も含まれています。ビルやマンションも、屋根、柱、壁を有していますから、当然、建築物に含まれます。これらの建築物を新築したり、増設したり、移転させる業務であれば、すべて建築という工事になるのです。
一方で建設業のもうひとつの代表的なジャンルである「土木」では、住宅や施設ではなく、道路やダム、橋、また住宅や施設がそのうえに経つことになる造成地などをつくります。
土木には、建築基準法のような定義を与えてくれる法律がありませんが、建築物以外の構造物や工作物を造る仕事が土木と考えて構いません。道路の中でも高速道路、トンネル、大きな橋、歩道橋といった、社会が生活を営むために必要なインフラとなる工事を担っているのが、土木なのです。
あらためて建築という仕事と比べてみると、土木は、山や谷、地面などの自然を人間にとって安全で利用しやすいかたちに整備したり、そこに道路や橋などの大規模な構造物をつくることであり、建築とは、土木がつくりあげた人間にとって利用しやすい土地のうえに、屋根や柱、壁がある住宅や施設を建設することを指すものと言えるでしょう。
それでは次に、建築施工管理と土木施工管理の違いについて確認していきましょう。
施工管理技士は、建設現場の監督役が主な役割の仕事です。「国家資格」として試験に合格し、資格を取得している人しか施工管理技士にはなれません。この観点からみれば、建築施工管理と土木施工管理の違いとしては、まずこの国家資格の種類の違いがあります。施工管理技士には、土木の建設を監督する「土木施工管理技士」、建築の建設を監督する「建築施工管理技士」をはじめ、電気工事を監督する「電気工事施工管理技士」、「建設機械施工技士」、「造園工管理技士」など、様々な建設工事ごとに資格が設定されています。
ちなみに施工管理技士の資格には、同じ建設資格でも1級と2級の区別も存在しています。2級は1級の下位にある資格で、できない仕事があるなど、業務の幅が変わってきます。
「建築施工管理技士」と「土木施工管理技士」では、資格もさることながら、仕事内容も大きく変わってきます。それぞれ現場の管理者として施工管理業務を行うわけですが、建設内容が大きくことなるため、やりがいを感じられる部分にも違いが出てくることでしょう。
土木施工管理の場合、ダムやトンネル、道路、上下水道といったインフラの工事を監督するので、人々の生活を根底から支えている仕事を行うことになります。土やコンクリート、水、鉄筋コンクリートなどを相手にしながら、文字通り、地図を変えてしまうような大規模な工事に携わることもあるでしょう。人々の生活を支えたり、とても大規模な建設プロジェクトにやりがいを感じるのであれば、土木施工管理の仕事が向いています。
一方、建築施工管理の仕事は、土木建設が造りだした基盤のうえに建築物を建てることになります。その仕事は、繊細かつデザイン性に富んだものになります。コンクリートや鉄筋はもちろん、鉄骨や木造などの施工管理、壁紙や塗装の仕上げなども管理しますから、等身大の大きさで利用者が触れることになる繊細な仕事を求められます。また、デザイン性が高かったり、名だたる建築家が設計した建築物を建てることは、とても話題になるため、派手な仕事とも言えます。デザインが好きな人であれば、建築施工管理の仕事に大きなやりがいを感じることでしょう。
「建築施工管理技士」と「土木施工管理技士」はいずれも国家資格ですが、試験の難易度はほとんど変わらないとされています。合格率についても、学科試験の場合は50%前後、実地試験の場合は30%程度となっています。
1級と2級で受注できる仕事の幅についてもほぼ同程度とされています。「建築施工管理技士」と「土木施工管理技士」ともに、1級であれば「監理技術者」として働くことができ、2級であれば「主任技術者」として働くことが可能です。施工管理技士として長期的にキャリア形成を目指していくのであれば、1級の取得も視野に入れてみてください。
給与の水準にも、「土木」と「建築」の両者で大きな差はありません。施工管理技士の平均年収は450万円程度とされていますが、1級の施工管理資格を保有していれば、それ以上の給与を期待することもできます。
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