ビル管理士とは、国家資格「建築物環境衛生管理技術者」の通称で、建築物の維持管理に関わる監督などを行います。建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称ビル管法)により、オフィスビルや商業施設、病院、ホテルなど面積が3,000平方メートル(学校施設は8,000平方メートル)を超える特定建築物にはビル管理士を設置する義務があります。
建物のオーナーがビル管理士として名義を出すこともありますが、一般的にはビル管理会社などに委託するケースが多いです。
ビル管理士の主な仕事は、建築物の維持管理業計画の立案および実施や測定・検査の実施と評価、問題点の改善案作成や意見申請などを行うことです。ビル管理士として建物に常駐して仕事をする場合、設備点検・清掃などの年間スケジュール作成、各専門業者の指導・監督、点検や清掃報告書の取りまとめや記録なども行う必要もあります。
特定建築物は一般建築物よりも構造や設備が大規模であり、不特定多数の人が利用します。ビルの最高責任者として、建築物の構造や設備、衛生面、環境面など幅広い知識が必要となるでしょう。特に特定建築物で2ヶ月に1度行われる空気環境測定結果の確認や改善提案は、ビル管理士の重要業務と言えます。
ビル管理会社の社員である場合、建物の設備の点検や清掃も行うことが多いです。ビル管理士の知識があれば、実際の実務でも非常に活躍できるでしょう。
特定建築物は、数年に1度保健所の立入検査が行われます。保健所が行うのは主に帳簿書類の保管状況や、建築物内の衛生設備の確認など。このとき立ち合いをして、保健所の検査員とやり取りするのもビル管理士の仕事です。
帳簿書類は直近1年間の点検記録を確認されるため、ビル管理士は日頃から書類のチェックや保管を行っておく必要があります。特に空気環境測定の結果は、基準から外れている項目があると改善策を求められることがあるので事前にチェックしておくようにしましょう。
ビル管理士の資格取得方法は2種類あります。ひとつ目は実務経験を積んでから建築物環境衛生管理技術者試験を受けて取得する方法です。資格試験を受験するためには、厚生労働省が定めた建築物において維持管理の実務に2年以上従事する必要があります。
ふたつ目は日本建築物環境衛生管理教育センターが主催する101時間の講習を受けて修了試験に合格することで取得する方法です。ただし、講習会は受講資格に当てはまらなければ受講できません。受講できるのは、医師や一級建築士、技術士の機械、電気電子、上下水道等の登録を受けた場合や、大学・高校で工学や農学など指定された学科を卒業して建築物の維持管理に関する実務経験を積んだ人などに限られています。
ビル管理士の試験は、毎年10月に開催されます。開催場所は、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・福岡の6都市です。願書は郵送またはインターネットで申し込みをすることができます。試験を受けるにあたり実務経験証明書を準備する必要があり、証明印をもらうなど時間がかかる場合があるので余裕をもって準備しておきましょう。合格発表は毎年11月上旬です。
ビル管理士試験の試験科目は、以下の7科目です。
合格の基準は以下のとおりです。
すべての科目でそれぞれ40%以上の正解率が必要で、さらに全体で65%以上の正解率がなくては合格できません。1科目でも基準値に満たないと合格できないため、7つの科目をまんべんなく学習しておく必要があります。
参照元:(pdf)第52回(2022年度)建築物環境衛生管理技術者試験の合格基準及び正答一覧|日本建築衛生管理教育センター
(https://www.jahmec.or.jp/kokka/shiken_pdf/2022/2022kizyun_seitou.pdf)
合格率はそれほど高くなく、10~20%です。年度によって変動がありますが、この範囲を抜けることはほぼありません。
仕事と受験の両立は大変ですが、仕事の隙間時間などを上手に活用して行うようにしましょう。スマートフォンなどでの視聴学習がある教材などを取り入れると、効率的に学習が進みます。
参照元:第52回建築物環境衛生管理技術者試験の合格発表|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28779.html)
ビル管理士の平均年収は、約350~450万円ほどです。専門職の国家資格ですが、一般的なサラリーマンと同じくらいの年収となっています。ただし、あくまで平均値なので実績や勤続年収などによって年収の額は変動します。
参照元:CIC日本建設情報センター(https://www.cic-ct.co.jp/birukan/column01)
ビル管理士の働き先として真っ先に考えられるのは、ビル管理業界。ビル管理会社ではさまざまな建物の管理を請け負いますが、ビル管理士の選任を依頼されるケースも多いです。ビル管理士は特定建築物で選任義務があることから、有資格者はビル管理業界で多くの需要があるでしょう。
ビル管理士は土木・建設現場で働くうえで目指したい資格です。資格を取得することで請け負える仕事の範囲が増え、仕事の幅が広がります。資格取得によってさらなるキャリアアップを目指すことが可能でしょう。
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