このページでは、建設業界においてコンクリートの施工特性を表す「ワーカビリティー」について、コンクリート工学の用語としての意味や影響を与える要因などをまとめていますので、土木施工管理技士として成長を目指す方は参考にしてください。
コンクリート工学において使われる用語であり、硬化していないフレッシュコンクリート(生コン)の施工特性を表しています。
作業を意味する「ワーク」と能力や性能を意味する「アビリティ」が連結された用語です。建設業界においてコンクリートの作業性や加工しやすさを示すものとして、そのコンクリートが有している塑性粘度やダイラタンシー、凝集力など様々な要素にもとづいて構成されます。
なお、ワーカビリティーの良し悪しについては、必ずしも生コンだけの特性に注目して判断されるのでなく、コンクリートを利用する建築物や構造物の形状・規模・配筋状態といった要素によっても相対的な判断がされることに注意しましょう。
コンシステンシーとは、生コン状態のコンクリートの堅さや粘度など、変形や流動に影響する抵抗の強さを示す用語であり、その指標です。
一般的には、建設業界や建設現場においてコンシステンシーの値が高いコンクリート(フレッシュコンクリート)ほど打ち込みやすく作業しやすいとされています。一方でコンシステンシー値が高いほど材料が分離しやすくなるといったことも特徴です。
そのため、コンシステンシーはコンクリートが有する性能の一面であり、ワーカビリティーはコンシステンシーを含めた生コンの総合的な評価といえるでしょう。
コンシステンシーの他にもワーカビリティーを構成するコンクリート工学用語があり、ここではその一部を紹介します。
プラスティシティーは「可塑性」を意味する用語であり、言い換えれば「元の状態に戻りにくい性質の程度」を示す指標です。
フレッシュなコンクリートを型枠に流し込んだ後、型枠を取り去るとコンクリートはゆっくりと形状を変えはしますが、分離したり崩れたりせずその状態を維持しようとします。そのような不可逆性をプラスティシティーとして定義しており、プラスティシティーに優れているコンクリートは材料分離せず、型枠に合わせた状態で形状維持を保ちやすいと考えられます。
流動体として扱われる硬化前のコンクリートは、当然ながらなかなか動かないような高粘度の状態よりも、さらさらと流れやすいほど打ち込みやすく、作業しやすいといえるでしょう。しかし、過剰に柔らかいコンクリートは硬化しても十分な強度や剛性を得られなくなり、そもそも建築用の素材として必要な基準を満たしていません。
そのため、コンクリートの作業性と機能性のバランスを考える上で定量的な指標を利用しなければならず、フレッシュコンクリートの硬さや流動性を示す値として「スランプ値」が利用されます。
柔らかすぎれば強度に不具合が生じ、硬すぎれば作業性が悪化するため、スランプ値では目的に合わせた適正値を保つことが大切です。
単位水量は、コンクリートに含有されている水分量であり、単位体積に含まれている水の量にもとづいて算出されます。
含水量が多いコンクリートほど柔らかくなって流動性も高まりますが、水分が増えるほどに骨材の沈下が起こりやすくなって分離リスクや不均一性も増大します。
水量とは対照的に、セメント量を増やせば増やすほどコンクリートの粘度が向上して強度も高まることも必然です。また、セメント量を増やすことにより材料分離も起こりにくくなって形状変化も緩やかにできるため、プラスティシティーを高められます。
反面、プラスティシティーが高すぎるとそもそも作業性が悪化します。
セメント粉末の粒子の細かさを示す要素です。粒子粉末が小さいほど、同じ質量のセメントでも水に接するトータルの表面積が大きくなるため、結果的に水と練り混ぜた際に強度を獲得しやすくなるでしょう。
粒子の細かいセメントは早強セメントなどに利用されます。
大気中には水分が含まれており、セメントは保管期間が長引くほど経年劣化していきます。劣化したセメントは品質や作業性が低下するため、セメントの状態もワーカビリティーを左右するポイントです。
コンクリートの練り混ぜ工程もワーカビリティーに大きく影響します。十分かつ適切に練り混ぜられたコンクリートであれば、均一性が高まってワーカビリティーも優れていくといえるでしょう。
砂利や砂といったコンクリートへ水と一緒に練り混ぜられる素材のことであり、骨材の量(割合)や品質もコンクリートの性質に影響する重要な素材です。
全体のセメント量や水分量に対して、骨材割合が多くなるほど粘度が低下して流れやすくなる反面、材料分離が起きやすくなりワーカビリティーは低下します。
骨材や水の他にも、コンクリートを練り混ぜる際に添加する薬剤が混和材料です。混和材料には減水剤やフライアッシュといったものが存在しており、混和材料を上手く活用することで水分量を抑えて強度を高めつつ、ワーカビリティーを確保することが可能となります。
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