地下工事の方法のひとつ、薬液注入工法について解説します。この工法の特徴や、代表的な3種類の工法と施工手順、実施に際しての注意点をまとめました。
地盤の強度を高めたり、あるいは止水性を増大させたりするためにおこなわれる地盤改良工事で、工事現場の安全を確保する目的で実施されます。原理としては、凝固する性質のある薬液を地中に注入し、地盤の浸水性を下げ、同時に粘着質をあたえることで、地盤の崩壊や湧き水の発生を防ぐものとなっています。
主な特徴として、次のようなものがあげられます。
薬液注入工法の代表的な工法は3つあります。「二重管ストレーナー工法(単相式)」「二重管(複相式)」「二重管ダブルパッカー工法」です。それぞれの工法とその特徴については次のとおりです。
二重管ロッドを使用し、削孔から薬液注入までの作業をひとつのプロセスとしておこない、均質な地盤改良を実現していく工法です。作業自体は比較的シンプルです。工事のコストをおさえやすいところや環境にやさしいところなどが、主なメリットとしてあげられます。
上述の単相式と、原理のうえではかわりません。ただし、注入作業において、瞬結性薬液および浸透性薬液を交互に注入していくところが異なります。交互に注入をおこなうのは、より幅ひろい性質や条件の地盤に対応することができるようになるからです。ちかごろは、単相式よりも、こちらの複相式が一般的になっています。
二重管ストレーナー工法とことなり、プロセスが2つあります。つまり、削孔作業と注入作業を別々におこなう工法です。プロセスを分けているのは、より確実な注入を実施しやすくなるからです。高い注入効果を得やすく、かつ、注入のスピードをおさえることが可能になるので、土粒子のすきまにも、薬液をしっかりと浸透させられるのです。
ただし、施工方法がその分複雑化するので、手間はかかります。ですから、コスト面では不利になります。また、工期も長くなります。
3種類の薬液注入工法について、より詳しい施工手順をみていきましょう。
最初に、地中の所定の深度に達するまで二重ロッドで削孔をおこないます。削孔が完了したら、瞬結性薬液を二重ロッドの内外管に注入します。ステップアップにより、所定改良区間への注入をスタートさせます。最後に、次の孔へボーリングマシンを移動させましょう。
単相式の二重管ストレーナー工法の場合と同じように、二重管ロッドで削孔をおこないます。次に、一次注入をおこないます。一次注入は、瞬結性薬液を注入する作業です。注入管周囲のシールや粗詰め注入作業などを実施します。これが済んだら、今度は二次注入に移ります。中結~緩結性薬液を使って、浸透注入をおこなう作業です。
一次注入と二次注入をステップアップしつつ繰り返し、所定区間への注入を進めます。作業が完了したら、次の孔へボーリングマシンを移動させます。
ケーシングを用いて、地中の所定の深度へ達するまで削孔を続けます。シールグラウトを孔のなかに充填します。外管を挿入したら、ケーシングパイプを引き抜きましょう。一次注入を実施するために、注入外管のなかにパッカー付きの内管を導入します。一次注入が済んだら溶液型注入材を入れ、浸透改良をおこないます。
この工法で使用する注入材には、種類によってさまざまな性質や特徴があります。そのため、施工状況や条件に適した材料を選定することが大切です。たとえば、アルカリ系の懸濁型に属する薬液であれば、粘性土地盤の圧密を強化したり、空洞を充填したりする場合などに適用されます。同じアルカリ系の薬剤であっても、溶液型有機系ならば砂質土における浸透注入に適しています。
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