石綿含有建材調査者は建築物の解体や改修において、石綿が含まれていないかを一定の知見に基づいて事前調査する資格者です。令和5年10月から、石綿含有建材調査者が建築物の事前調査を行うことが義務化されます。そのため石綿含有建材調査者の需要は高まることが予想されるのです。
石綿含有建材調査者は、石綿の健康被害防止のスペシャリストです。石綿の繊維を人間が吸い込むと命に関わる病気につながります。石綿含有建材調査者は、事前に建物を調査。石綿があるかどうか判断する仕事です。あるとわかれば石綿の飛散防止や対策もできます。また、建物だけが調査対象ではありません。工作物や船舶の解体作業や改修まで含まれているのです。石綿が含まれている可能性のあるものについて、石綿含有建材調査者は調査をして、作業員の健康を守ります。
石綿はアスベストとも呼ばれている、天然の鉱物繊維です。石綿は6種類存在しますが、その中のクリソタイルが石綿製品として70年代~90年代をピークとし、さまざまな場所で使われてきました。たとえば、防音材や建設資材、保温断熱のための吹付け、さらにブレーキパッドにも使用されてきたのです。
石綿の特徴は高い断熱性や防音性や耐腐食性、熱や摩擦や酸やアルカリに強く変質があまりない性質を持っています。そのため多くの工業製品で採用されてきました。
石綿の問題は健康被害です。建物の解体や改修時、石綿を切断や研磨をすると繊維が飛散します。作業者が繊維を吸い込んだ場合、肺に貯まり、結果、命に関わる重大な病気につながることが分かりました。たとえば、代表的なものとして、肺がん・悪性中皮腫・石綿肺があげられます。そのため石綿が関わる建物の解体や改修は慎重で適切な対処が求められるようになったのです。
石綿のピークは70年代~90年代ですが、その時代の建物は2023年になっても残っています。新しく石綿製品は製造もされていませんが、使われている建物自体は残存しているわけです。解体や改修で石綿を切断や研磨をすれば当然、作業員が吸い込んで健康被害が起きる可能性は十分考えられます。そのため、事前調査により石綿の有無を確認してから対策や予防策が必要なのです。
石綿含有建材調査者になるには、資格を取得しなければなりません。資格を取得するには講習の受講が必要です。講習登録規定の要件を満たした機関が講習を主催しています。また、事前調査が必要な建物の種類、一般、一戸建てで分けられているのが特徴です。一戸建てと一般では調査範囲が異なります。また、単純に講習を受講さえすれば取得できるものではありません。講習受講後、60分間の修了試験の合格が必要です。
「建築物石綿含有建材調査者講習テキストに記載された内容に関しての習熟度を評価」します。修了試験の合格基準は60%以上の得点です。また、一般建築物石綿含有建材調査者と一戸建て等石綿含有建材調査者は筆記試験だけですが、特定建築物石綿含有建材調査者だと、実地研修や口述試験が加わります。
一戸建ての区分だと、戸建住宅や共同住宅の住居部分に限り、石綿の調査に携われます。ポイントは住居部分だけという点です。ベランダや廊下は住居部分に含まれません。ベランダや共有部分まで調査ができるのは一般や特定だけです。
一般になると、住宅だけではなく、工場や店舗も含めて、建物全般の調査ができます。また、一戸建て、一般以外に「特定」という資格もありますが一般と同じです。ただし、講習内容に違いがあります。
区分 | 学歴等の資格 | 実務経験年数 |
---|---|---|
1 | 学校教育法による大学(短期大学を除く。)において、建築に関する正規の課程またはこれに相当する課程を修めて卒業した者 | 卒業後の建築に関する 実務経験年数:2年以上 |
2 | 学校教育法による短期大学(修業年限が3年であるものに限り、同法による専門職大学の3年の前期課程を含む。)において、建築に関する正規の課程またはこれに相当する課程(夜間において授業を行うものを除く。)を修めて卒業した者(専門職大学の前期課程にあっては、修了した者) | 卒業後の建築に関する 実務経験年数3年以上 |
3 | 「2」に該当する者を除き、学校教育法による短期大学(同法による専門職大学の前期課程を含む。)または高等専門学校において、建築に関する正規の課程又はこれに相当する課程を修めて卒業した者 | 卒業後の建築に関する 実務経験年数:4年以上 |
4 | 学校教育法による高等学校または中等教育学校において、建築に関する正規の課程またはこれに相当する課程を修めて卒業した者 | 卒業後の建築に関する 実務経験年数:7年以上 |
5 | 「1~4」に該当しない者(学歴不問) | 建築に関する 実務経験年数:11年以上 |
6 | 建築行政または環境行政(石綿の飛散の防止に関するものに限る。)に関わる者 | 実務経験年数:2年以上 |
7 | 特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者 第一種作業環境測定士または第二種作業環境測定士 |
石綿含有建材の調査に関する 実務経験年数:5年以上 |
8 | 石綿作業主任者技能講習を修了した者 | 実務経験年数不問 |
9 | 産業安全専門官もしくは労働衛生専門官、産業安全専門官もしくは労働衛生専門官であった者 | なし |
10 | 労働基準監督官として従事した経験を有する者 | 従事経験年数:2年以上 |
11 | 11-a建築物石綿含有調査者で、建築物石綿含有調査者として石綿含有建材の調査に関する実務経験年数が2年以上の者 11-b 建築物石綿含有調査者で、受講資格区分番号「1~7、8-b~10」に該当する者(※1) |
(※1実地研修の際に必要な要件)
科目 | 時間 |
---|---|
建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1 | 1時間 |
建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識2 | 1時間 |
一戸建て住宅等における石綿含有建材の調査 | 1時間 |
現場調査の実際と留意点 | 3時間 |
建築物石綿含有建材調査報告書の作成 | 1時間 |
科目 | 時間 |
---|---|
建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1 | 1時間 |
建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識2 | 1時間 |
石綿含有建材の建築図面調査 | 4時間 |
現場調査の実際と留意点 | 4時間 |
建築物石綿含有建材調査報告書の作成 | 1時間 |
建築物石綿含有建材調査者講習登録規程に基づいた登録講習機関があり、建築物石綿含有建材調査者講習を実施しています。講習会は2日~3日で行われています。講習会への参加はある程度、まとまった期間が必要です。そのため、仕事をしながら参加するためにスケジュールを立てる際は数日を見据えたほうがいいでしょう。
2023年10月から石綿含有建材調査者による事前調査が義務化されています。70年代~90年代にかけて石綿製品は使われてきました。その時代に建てられた建築物は日本各地に無数に存在しています。また、経年劣化により解体や改修の需要も高まっています。
その点において、石綿含有建材調査者の需要はあるといえるのです。解体業者やリフォーム業者は単純に義務というだけではなく、作業員の健康を守る上でも、石綿含有建材調査者は必要でしょう。そういった面で石綿が含まれた建物がある限りにおいて将来性はあるといえます。
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