取り扱い方を誤ると、大きな事故につながりかねないガソリンやベンゼンなどの有機溶剤。労働安全衛生法では、有機溶剤を取り扱う事業所に対し「有機溶剤作業主任者」の専任を義務付けています。
有機溶剤を取り扱う業務において、現場で作業を指揮する責任者です。有機溶剤作業主任者は、現場での作業指揮の他にも使用機器の点検や保護具の使用状況の確認、有機溶剤中毒防止措置が適切に行われているかを確認する役割も担います。
有機溶剤作業主任者の資格は「有機溶剤作業主任者技能講習」を受講して修了試験に合格することで取得できます。
揮発性が高い有機溶剤は、蒸気となって作業者の呼吸を通じ、体内に吸収されやすい化学物質です。有機溶剤が皮膚や呼吸器を通じて体内に吸収されると、中枢神経を麻痺させて頭痛やめまい、失神などの症状や急性中毒、慢性中毒などの健康障害を起こすおそれがあります。
これらの中毒は、適切な換気や保護具の着用で防止することができますが、有機溶剤の特性や毒性に関する知識不足により、いまだに労働災害が多く発生しているのが現状です。
労働災害を防ぐために、労働安全衛生法では有機溶剤を取り扱う人への「労働衛生教育」が推奨されています。
以下は、有機溶剤作業主任者技能講習の受講に関する情報です。受講を検討している方は参考にしてみてください。
有機溶剤作業主任者は、労働基準法と労働安全衛生法など、労働に関する法令の普及促進や労働条件の改善、労働災害の防止を図るため法人の各地域にある労働基準協会などで受講できます。東京都の場合、公益社団法人「東京労働基準協会連合会本部」や「安全衛生研修センター」が定期的に講習が行われている施設です。
具体的な日程は、実施している団体・協会や地域によって異なります。どの地域で受講する場合も、連続して2日間の日程でスケジュールが組まれます。平日に行われることも多いので、あらかじめ日程を把握しておき、スケジュールを調整した上で受講すると良いでしょう。
受講にかかる費用は、実施する団体・協会や地域によって異なりますが、相場はおよそ10,000~15,000円程度です。受講料に加えてテキスト代がかかる場合もあるため、各機関で事前確認を行いましょう。
一例として、公益社団法人「東京労働基準協会連合会」で実施される講習では、以下の受講料とテキスト代がかかります。
カリキュラム名や講習科目は受講する機関によって多少異なりますが、どの地域で受講しても内容は同じです。基本的に、以下の4項目について2日間かけて講習が実施され、講習後に修了試験が行われます。
有機溶剤作業主任者の講習を受けるために必要な資格は特にありません。満18歳以上であれば、どなたでも受講できます。
修了試験は、講習をしっかり受けていれば合格できる難易度です。準備や予習を行わなくても多くの人が合格できるため、難易度は高くないと言えます。
塗装や洗浄、製造業などで有機溶剤中毒にかかるおそれのある業務に従事する人が、健康被害を防止するために受ける講習です。労働安全衛生法では、労働者を有機溶剤取扱業務に就かせる事業者に対し、労働衛生教育として教育の実施を求めています。
ただし「有機溶剤作業主任者」の資格を取得している場合、有機溶剤作業主任者技能講習に有機溶剤取扱業務に関する安全衛生教育が含まれているため、あらためて講習を受ける必要はありません。
あくまでも、有機溶剤作業主任者の資格を有していない方が対象となります。
上記以外にも、風通しが悪く換気が不十分な地下室や船倉、タンクやピットの内部、暗渠、マンホールなど、屋内の作業場が対象となる場合もあります。
有機溶剤業務従事者教育を受けておくと、業務で有機溶剤を扱う作業ができるようになります。塗装や洗浄が必要な業務に就けるため、幅広い製造業の現場で必要とされる人材になるでしょう。
建設現場などでは、安全衛生教育を受けたことを確認するため修了証の提出を求められることもあります。有効期限がなく更新手続きが不要なため、一度取得しておくと発行された修了証が知識の証明になるでしょう。
実施内容 | 講習時間 |
---|---|
作業環境管理 | 1.5時間 |
作業管理 | 1時間 |
健康管理 | 1.5時間 |
災害事例及び関係法令 | 2時間 |
有機溶剤業務従事者教育では、有機溶剤の正しい取り扱い方法や呼吸用保護具の着用の仕方、作業環境の管理など、安全に業務を行うための知識を学びます。また、万が一有機溶剤によって健康障害が起こった場合の対処法や応急措置方法も学べる講習内容です。
第一種から第三種まである有機溶剤の区分表示や危険度の違いを知り、作業環境管理ができるようになります。適切な換気を行うための保守点検や点検の仕方、貯蔵や空容器の処理方法についてもこの項目で学ぶでしょう。
有機溶剤で起こった過去の災害事例をもとに、有機溶剤の危険性や人体への影響について動画や写真で学びます。この項目は学科講習のみで、実技講習はありません。
インターネットの普及に伴い、研修センターなどへ足を運ばなくてもWeb受講ができるようになりました。ネット環境があれば時間や場所を選ばず講習を受けられ、講習後は従来の講習と同様に修了証が発行されます。
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