ここでは、浚渫工事(しゅんせつこうじ)の作業内容と流れ、工法について解説していきます。
浚渫工事とは、河川や港湾の水底をさらい、土砂を取り去る作業のことです。水底の土砂を取り去り、航路の確保を行います。特に、河口部では上流から土砂が堆積して、河川の流量が確保できなくなる恐れがあるため、計画的な浚渫工事が必要です。
万が一、川底に堆積土砂がある状態で河川が増水すると、氾濫の原因に。ただし、自然物のため、浚渫工事がままならない河川も存在します。
令和元年に発生した台風第19号により、全国的に大規模な浸水被害が相次ぎました。そこで、令和2~6年までの間、緊急浚渫推進事業※が創設されています。2024年までは、浚渫工事を行う自治体が増えると予想されます。
また、海も河川も底の土砂が堆積して水深が浅くなると、船舶が座礁するリスクが高まります。一定の水深がないと安全な航行ができないため、船舶が航行する河川や港湾では定期的に浚渫工事が実施されています。
※参照元:緊急浚渫推進事業の創設
(https://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/shichoson/documents/5_kinkyusyunsetu_200124.pdf)
浚渫工事には、大きく分けて2つの工法があります。1つ目はポンプ浚渫、2つ目はグラブ浚渫です。
ポンプ浚渫は、土砂・海水を一緒に吸い上げる工法です。吸水管を海底に降ろして、カッターを回転させながら土砂を切り崩します。切り崩された土砂は、船のポンプの力で吸い込み、排砂管を経由して埋立地に排出されます。
続いてグラブ浚渫とは、海底の土砂を直接掴みとってすくい上げる工法です。船からクレーンのようなグラブバケットと呼ばれるアームを降ろし、土砂を掴んだまま土運船に乗せて埋立地へと搬出します。
ポンプ浚渫は、大規模な浚渫工事に適している工法です。グラブバケットですくい上げる工法よりも、一度に大量の土砂を搬送できます。カッターを回転させるポンプ浚渫船が一般的ですが、水ジェットで土砂を攪拌して吸い上げるポンプ浚渫船もあります。
一方で、グラブ浚渫は施工中の濁りを抑えられる工法です。すくい上げるため、水中で土砂を攪拌せずに済み、環境に配慮して浚渫工事を進められます。
浚渫工事では、事前に測量や、底質の粒度・堆積状況の確認を行います。現地調査を経て、機材の搬入経路をおさえたら、作業に必要な船舶を水上に降ろすための設備を整えます。その後、重機や船舶を運び入れて、水底に堆積した土砂を取り除く作業を実施。グラブ浚渫の場合は、土砂運搬船で土砂を運びだし、埋立地に排出します。
浚渫工事にかかる期間は、作業範囲によって大きく異なります。たとえば、沖縄県にあるサンセットビーチ沖側で航路浚渫工事を実施した事例では、2021年9月~2022年2月末までの期間に工事を行いました。大規模な浚渫工事だともっと期間がかかるケースもあるので、長期的な計画を立てて実施する必要があります。
浚渫工事は人々の暮らしにかかわる大切な作業で、綿密な計画を立てて実施する必要があります。1958年に浚渫工事が完了した利根川では、潮止め堰を建設せずに行われたため、上流まで50km近くにわたり海水が逆流しました。周辺一体の農作物が被害を受けたほか、飲料水も使用不可になるなど、人為災害が起こっています。このような事態を二度と起こさないためにも、浚渫工事を行う際は丁寧に作業を進めることが大切です。
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