さまざまな要因が重なって発生したウッドショック。木材価格の高騰や輸入木材の不足などの問題を引き起こしました。特に、住宅業界が受けた影響ははかりしれません。全体像を理解するためには、ウッドショックによって変化が生じた土木業界の状況についても、しっかりと把握しておくことが重要です。
ウッドショックは、2001年に起こった木材価格の上昇のことです。これは世界的に見られた現象で、住宅の柱や土台などに使用するための木材不足が、その価格上昇の直接の原因となっています。また、ウッドショックという名称は、1970年代に発生したオイルショックと呼ばれる石油危機になぞらえて付けられました。
参照元:ZUUonline
ウッドショックが発生した主な原因のうち、建築ラッシュに関連するものとしては、主にふたつあげられます。ひとつめは、アメリカや中国で、住宅を購入したり住宅にリフォームをほどこしたりする人が増加したことです。政府による金融緩和政策で、住宅ローンの金利がかなり低くなったことが、大きく影響しています。金利がさがれば、おのずと住宅やリフォームへの需要が増加するため、きわめて自然な流れであるともいえます。
もうひとつの原因として考えられるのは、経済成長にともなって木材の需要が伸びている中国で、産業用の丸太が、かつてよりも大量に消費されていることです。
世界的なコンテナ不足もウッドショック発生の大きな原因だといえるでしょう。オンラインショッピングの利用者がかつてないほど増えていることなどから、流通量の多さにコンテナが対応しきれていないという現状があります。そんな中、春にスエズ運河で大型のコンテナ船が座礁するアクシデントが起こり、輸送業務がさらに滞ってしまったのです。
住宅を建てるために必要な量の木材確保がなかなかできないため、建築を予定通りにスタートさせることができずにいる状態が続いています。マイホームが完成するタイミングがずれることで何かしらの問題が生じる場合には、建築工事の遅延状況について、できるかぎり早めに問い合わせるなどして、なんとか対応していくしかありません。
ウッドショックによって、国内における木材自給率の低さを痛感している業界は少なくありません。
特に、注文住宅業界においては、さまざまな設備や間取りなどについて詳細な打ち合わせをじっくりとおこなう場合が多いです。そして、最終案を出してから見積もりを出すので、木材価格の高騰は、ダイレクトに依頼主の負担となってしまいます。想定購入額をあまりに大きく上回るようであれば、最終案をあきらめなくてはならない事態にもなりえるでしょう。
ローコスト住宅や建売住宅の販売を取り扱う会社にとっても、ウッドショックは大きな打撃となりました。これらの会社では、お客さんにできるだけ低価格で住宅を提供することを第一のコンセプトとしているため、価格の安い輸入木材に頼ってきました。会社のコンセプト上、価格競争にさらされたからといって、販売価格を変更するのは容易ではないはずです。
ウッドショックが及ぼしたさまざまな影響を受け、国産の林業を考え直すべきだという声もあがっているようです。けれども、森林を再生するための再造林はかなりのコストがかかってしまうため、木材を売却しても、収入はトータルではマイナスになってしまうという計算になります。そのため、この状態を改善すべく、現在さまざまな補助事業がおこなわれています。
先の予定やライフスタイルにあわせて、マイホームなどの完成時期をしっかり決めておきたいと考える人もいるでしょう。けれども、必要な木材や資材を確保しにくくなっている現状においては、着工がどうしても遅れがちになっています。なかなか対処のしようがない問題ではありますが、せめて設計自体の打ち合わせなどをスケジュールどおりに進めようにするなど、できることからしていくことが大切です。
土木事業界においてみられる特に顕著な現象としては、木材の不足に加えて、生コンクリートや鉄鋼などの資材の高騰が挙げられるでしょう。資材価格が高騰しているので、おのずと仕入れ単価も上昇が続いています。それも、かなりの勢いで上昇しているため、及ぼす影響は決して小さくありません。
さまざまな業界に深刻な影響を与えているウッドショック。今後の見通しを立てること自体が難しいのが現状です。この状況にどのように対応していくべきか見極めるためにも、土木施工に携わる者としては、今後の動向を注視していくことが大切です。
本サイトの監修・取材協力企業
株式会社ティーネットジャパンとは
発注者支援業務において
日本を代表する企業
株式会社ティーネットジャパンは、公共事業の計画・発注をサポートする「発注者支援業務」において日本を代表する建設コンサルタントです。
建設コンサルタントにおける『施工計画、施工設備及び積算』部門の売上げで22年連続業界1位を獲得(『日経コンストラクション』2024年4月号「建設コンサルタント決算ランキング2024」)。主に官公庁の事務所に拠点をおいた業務のため、官公庁に準じた完全週休2日制。ゆとりある環境です。