ARとは、Augmented Realityの略称。日本語では「拡張現実」と訳します。コンピュータの画面上に、実際にある建物や風景を映し出し、ここの仮想の画像を重ね合わせる技術が、ARです。建設分野においては、画面上に実際に建設現場を映し出し、ここに仮想の画像を重ねて拡張することでリアリティある工事シミュレーションをすることが可能となります。
ちなみに、似た言葉、似た概念にVRがありますが、こちらはVirtual Realityの略称。日本語では「仮想現実」と訳します。実際には存在しない仮想の空間を、あたかも現実の空間であるかのように体感させる技術が、VRです。一般には、ヘッドマウントディスプレイなどを使用してVRを利用します。
建設現場におけるARの主な活用方法・活用例を3点ほど見てみましょう。
実際の現場の映像の中に、予定している建造物の外観を重ねて映し出すことで、対象建造物の立地イメージや周辺の景観とのマッチングイメージを得ることができます。社内資料としてだけではなく、クライアントや外部関係者に向けた資料としても役立つでしょう。
建設工事は「設計図通り」が大原則です。設計図から少しズレてしまったがために、ボタンの掛け違いのように、最後まで全体的にズレてしまうことは避けなければなりません。常にARと照合しながら作業を進めることで、「設計図通り」の工事を進捗させることができます。
ARにセンサーや画像解析システムを連動させることで、視覚情報以外の情報を察知させることができるようになります。たとえば、急な気温上昇による熱中症のリスクが生じた場合に、警告を発することも可能です。作業の安全管理分野でも、ARは大活躍します。
建設現場でARを採用する主なメリットを4点ほど見てみましょう。
建設中や建設予定の現場の映像の上に、今後の工事の工程を映像で重ねることができるため、限りなく現実に近い映像で工事のシミュレーションをすることができます。
シミュレーションが映像化されれば、作業員や管理者などは、それぞれの立場から自分の仕事を具体的にイメージしやすくなります。仕事がイメージできれば、作業への意欲も向上することでしょう。
情報共有の媒体が数値や文字ではなく映像になることで、工事関係者同士での情報共有の精度もスピードも上がることが期待できます。正しく迅速に情報共有ができればこそ、早い段階で問題を発見したり改善策を検討したりすることもできるようになるでしょう。
現場に映像に対して、予定しているタイプの工事だけではなく、その他の様々なタイプの工事の映像を重ねることができます。リアリティあるシミュレーションを多角的に行うことで、思わぬ発見を得られるかもしれません。
ARの導入により、現場はもちろんですが、ひいては事務方の業務も効率化していくことでしょう。会社全体の動きが効率化することで、昨今問題化している建設業界での人材不足問題解消に、多少なりとも貢献するかもしれません。
ARを導入するためには、当然ですが初期費用がかかります。専用の機材が必要となるので、1台あたりの単価は決して安くありません。まして複数台のシステムを整えるならば、かなりのコストになることを承知しておかなければなりないでしょう。
ただし一度導入すれば、そう簡単に故障するものでもないので、その後の作業効率・作業精度の向上を考えれば、決して割高な買い物ではありません。長期的な視野に立ち、決して安価すぎるシステムで妥協しないことが大切です。
土木工事に関わる人の中には、コンピュータ関連機器の使用に不慣れな人も少なくありません。そのような人が現場の中核として働いている場合、システムの導入に対して、少なからぬ抵抗が生まれる可能性はあるでしょう。
ARを導入することによるメリットを何度も伝え、無理のないレベルから着実に研修して浸透させていくことが望まれます。
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