土木施工管理技士が実際に現場で行う仕事について具体的に解説します。どの仕事もそれぞれ重要な役割を持ち、一つとして欠かすことはできません。実際に働くイメージの参考にしてください。
工事の効率や安全性を決める事前準備、綿密な計画が必要
施工計画は工事の進め方や材料の搬入タイミングなど、工事全体の段取りを決めていく業務です。スムーズで安全に工事を進めるためには綿密な施工計画が欠かせません。作業動線や進める順番など、現場ごとの状況に合わせて工事ごとに作成することになります。工事を始める前には、施工計画を記した施工計画書を作成します。監督と現場作業員だけでなく、会社の人間なども参加して様々な意見を取り入れて作っていきます。
いくつかの施工計画を同時進行でつくり、比較検討するコンペ方式を採る場合もあります。
工事の受注、会社の存続にも大きく影響する重要業務
積算には、発注するための積算(官積算)と受注するための積算(工事積算)がありますが、ここでは工事積算について説明します。
工事積算とは工事に関わる作業や材料費、諸経費などすべての要素を一つずつ拾い出して正確な金額を計算することです。あいまいな積算では競合他社に負けて受注できませんし、仮に受注できても適切な利益を確保できません。資格がなくてもできる仕事ですが、会社の利益と存続が掛かってくるため責任は大きいです。しかし、受注できたときには達成感も大きいでしょう。
工期・コスト・品質に大きく関わる、土木施工管理の花形業務
工程管理とは、工事を進めていくうえでの手順を決めておいて、着工後はその通り進んでいるか確認する業務です。工程管理が悪いと各作業の間で待ち時間が発生し、工事全体の効率が落ちてしまいます。工期・コスト・品質に大きく関わってくる重要業務といっても過言ではありません。上手な工程を組むためには経験が必要になりますが、現場全体の動きをイメージし、日々まじめに仕事をこなしていれば自然と身につきます。
工程管理を上手くこなせると、現場管理者としての評価も上がります。
土木工事でつくる構造物が基準をクリアできるようにする業務
品質管理とは、工事で完成した構造物の性能が設計で定められた基準をクリアできるように管理するための業務です。また、作業自体の品質管理も業務範囲で、無駄のない工程で進んでいるかなどの観点でもチェックを行います。適切な品質管理ができていないと不良品が生まれてしまう事も。高品質の工事を行うために、時には厳しい品質目標設定も重要です。すべてを同一品質とすることは難しいですが、基準を満たす品質管理が重要となります。
品質管理にはさまざまな手法があります。理化学試験、原位置試験、破壊試験、ミルシート管理、出荷伝票管理など、挙げたらきりがありません。それだけ知識が必要です。
現場にかかる費用を把握・コントロール。利益を確保する
原価管理とは、工事中にかかる費用をコントロールすることで、予定通りの利益を確保するための業務です。現場で発生しているすべての費用を適宜計算して把握し、計画原価の範囲内に収めるための管理をおこないます。効率良く工事を進めることも原価を圧縮する効果がありますが、効率を求め過ぎると品質低下や事故が発生してしまうことも。現場での経験が重要になる仕事ですが、「ムダの削減」を意識した監理を毎日こなして居れば自然と身についてきます。他業種で会計などに関わっていた人は、培ったスキルを活かすこともできるでしょう。
労働災害と公害を防いで、スムーズな工事のために不可欠な業務
安全管理は工事中の事故を防いで、スケジュール通りに工事を進めるための業務です。ミーティングでの安全確認や現場の安全確保など、業務内容は多岐に渡ります。現場の規模によって選定する管理責任者の数が変わります。
環境保全管理は現場から発生する公害を防いで周囲の環境を守るための業務です。近隣住民に対する騒音や振動などを防いで、住環境を確保するのも重要な役割。一見工事に直結しないような気がする業務ですが、人命に関わる内容であり、安全管理と環境保全なしにはスムーズな現場進行は成り立ちません。
スムーズに工事を進めるための重要業務、現在は電子化も進む
発注者対応とは、工事が始まる前から完成まで発注者と様々なやり取りを行う業務です。スムーズに工事を進めるためには、発注者と円滑なコミュニケーションが重要となります。迅速かつ正確な報告が必要とされると同時に、方針や指示の確認、情報や意見の交換など、相手の意を汲むことも求められるので、営業に似た部分もあります。公共事業などでは業務効率の向上を図るため、インターネットを活用して発注者との書面のやり取りを電子化する取り組みも進んでおり、今後ますます普及が進むと思われます。
作業員に指示を出す司令塔、現場全体の出来を左右する業務
現場監督は野球やサッカーの監督と同じように、全体を見回して指示を出す重要なポジションです。規模の大きい公共事業から小規模現場まで、どの現場にも必須の役割です。工事がうまく進むかどうかは現場監督の腕次第といっても過言ではありません。着工前の周辺住民への説明会や、騒音などによるクレームの対応も現場監督の重要な仕事。責任が大きく大変な仕事ですが、上手くこなせるようになれば、監理技術者や主任技術者として高い評価を得られるでしょう。
基本的にゼネコンは「元請け」サブコンは「下請け」しかし例外も多い
一般的に建設業界において、ゼネコンは元請け企業を、サブコンは下請け企業を指します。
国や地方公共団体・企業など建設工事を発注する施工主と直接契約するのが「ゼネコン」です。大きなプロジェクトの取りまとめを行う企業で、全体的な建設計画のなかから、スケジュールと工事の高品質を実現するために、工事を作業区分ごとに分けて、複数企業に再発注して建設を進める仕事です。ここで、ゼネコンから再発注を受ける建設会社が「サブコン」と呼ばれます。小さな規模で動くため、ゼネコンから委託された仕事を動かすことが多いです。
ゼネコン・サブコンという名前自体は建設業界でよく耳にしますが、実際には企業としてのゼネコンとサブコンはこれほど明確ではなく、建設工事はサブコンからさらに下請けされる場合もあります。ここではサブコンもゼネコン的役割を果たします。また、ゼネコンからゼネコンに仕事が発注されたり、地方に本拠を置く地域密着型の建設会社から大手ゼネコンに仕事が出されたりする場合なども。
このために「大手ゼネコン企業」と呼ぶときには、単に企業規模で分類し大規模な建設会社を指すケースも多くあります。
デベロッパー=土地開発を仕事にしている企業 ゼネコン=建設を仕事にしている企業
土木施工管理技士として働くうえで、押さえておきたい「デベロッパー」と「ゼネコン」の違いについて解説します。
「デベロッパー」とは、建設物の構想や設計、建設用地の取得、さらに建設後の広告展開や運用などについて構想する企業。一方で「ゼネコン」は、計画された建設物を実際に建造する仕事を担っています。両者は事業の「発注者」と「受注者」という役割の違いがありますが、いずれも大規模な開発工事を実現するために力をあわせて働いているのです。
【デベロッパーとゼネコンの違いとは?】について
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施工管理技士は書類作成の事務作業も負担になる
土木工事などの計画や契約については様々な書類を作成して管理しなければならず、施工管理技士にとって書類作成の事務作業はしばしば業務負担になりがちです。
ここでは土木施工管理技士が対応しなければならない書類の内容や、具体的な書類の種類について解説していますので参考にしてください。
土木施工管理技士が作成する書類の種類について
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基礎工事に使う杭(基礎杭)は大きく3種類
土木工事では建造物の土台を作るために地中へ打ち込む「杭(基礎杭)」を使用します。
杭には複数の種類があり、鎌倉時代の頃から使われていた木製の杭(木杭)から、鉄鋼を使った鋼杭、さらにコンクリートを使ったコンクリート杭まで、建設業界の発展や進化とともに使用される杭も移り変わってきました。
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