工事の効率や安全性を決める事前準備、綿密な計画が必要
施工計画とは工事全体の施工方法や手順、工程など決めていく事で、工事を安全かつスムーズに進めるために必要なものです。
工事を請け負っても、施工計画がなければ誰がどんな作業から取り掛かればいいのか分からないため着工することすらできません。仮に計画がないまま無秩序に工事を進めても、作業動線が競合したり材料が足りなくなったりして効率よく工事を進めることはできないでしょう。
施工計画は工事を請負った後最初に行うべき仕事で、全体の出来栄えや効率を決定する重要な物です。土木工事は現場ごとに条件が違うため、施工計画も現場に合わせて毎回綿密に作成する必要があります。
工事を受注したら、着工する前に施工計画を記した施工計画書を作成しなければなりません。施工計画書は発注書などとは違い、工事を実施する受注者が作成します。対して、発注者は施工計画をチェックし妥当性を追究します。
施工計画は現場に直接関わる人間だけで作成するのではなく、会社組織を活用して様々な意見を取り入れながら作ります。過去の経験なども交えながら、スムーズかつ安全な施工計画を立てていきます。 場合によっては複数の計画を立て、工期やコストなども比較検討して良いものを採用する場合もあります。
施工計画書の作成のポイントはその工事に携わる関係者全員が理解できるようにすること、そして計画通り進められるように作成することです。
土木施工管理技士(施工者)が、その建設工事の設計図書の内容にもとづいて、工法や工期、品質管理、コスト、環境配慮などを考慮しながら作成。竣工前にクライアントに提出して承認を得る必要があります。最終的には、施工業者や監督員に工事内容を説明するために使用するツールにもなります。そのため、自分が理解できればよいメモではなく、だれにとってもわかりやすくまとめられた書類にしなければなりません。
部品ひとつ取っても、どこでどのような用途で使用されるのかが明確でなければ、誤って使用されてしまい、結果工事全体の進捗の遅れ、なんらかのミスにつながる可能性が生まれてしまいます。
また工事の種類によって、施工計画書に記載しなければならない項目も異なってきますので、必要な記載項目も漏れなく揃えることも大事なポイントのひとつです。
提出した施工計画書は、施主などから修正依頼をされることがあります。これは、建設業界では「手戻り」と呼ばれていますが、手戻りになってしまう施工計画書には、おおよそ次のような不備があるものです。
こういった点には十分に注意して、施工計画書を作成するようにしましょう。
また竣工中や工事後になれば、施工計画書は、実際に行われた工事記録と照らし合わせるために使われる資料となります。そのため、施工計画書に実際には行わない工事の内容などが盛り込まれていれば、当然、監査者から指摘を受けることになります。業務を請け負うために過剰な内容などを記載しないようにすることも、施工計画書の作成で注意すべきところです。
公共工事では、工事後の成績評価は、今後の受注に関わります。また、土木施工管理技士自身の仕事の評価基準にもなるので、工事の受注を増やす高評価を獲得するためには、必要な書類を揃えたり、記録写真をきちんと押さえておくことも求められます。
施工計画書の項目のひとつに安全管理ついて記載する箇所があります。建設現場の安全管理のために重視する必要があるのに踏まえ、工事完了後の成績評価にもつながる重要な項目なので、手を抜くわけにはいきません。
しかし施工計画書に安全管理について細かい規定を記載すれば、それだけ業務時間を割かなければならなくなります。記載した安全管理の遂行することが可能なのかと言う点も考慮に入れなければ計画時点からスケジュールの組み方アンバランスになってしまったり、工期の圧迫など負担を増やす要因となるでしょう。ここでは点数を獲得することと実際の現場が円滑に進められるバランスを鑑みて作成するようにしましょう。
工事を進めるにあたり周辺に住んでいる方、地域の方への配慮が欠かせません。いわゆる地域貢献と呼ばれるものですが、ここに力を入れすぎてしまうことも、無理なスケジュール組みになってしまい負担を増やしてしまう要因になりかねません。
工事に関わる方と地域へのイメージアップについてもバランスを考えながら、計画書の作成をおこなうと良いでしょう。
施工計画書を効率的に作成するために使えるソフトは、いくつかあります。「ソフトにコストを使わず施工計画書を作成したい」のであれば、一般的に最も使用されている「Excel」向けにつくられた無料のテンプレートデータを活用すればよいでしょう。施工計画書のテンプレートデータは、「日本建設業連合会(日建連)」がwebサイトで公開しています。施工計画書に必要な項目がわかりやすくまとめられていることはもちろん、「Excel」のデータなので特別な操作方法を学ぶ必要がないこともメリットのひとつです。それでいて、「公共建築工事標準仕様書」にも対応しているため全国どの地域の工事にも活用することができます。ただし念のため、実際に使用する前に、監督員の確認を得ましょう。
またその他、施工計画書を作成でいる専用ソフトとしては、「施工計画書作成支援システム」があります。これは、1989年のリリースいらい、建設企業を中心に全国で3万5000社にものぼる導入実績があり、施工計画書の作成ソフトの定番になっています。実際の作成に便利な機能が豊富に搭載されていることをはじめ、公共工事の受注で有利となる「NETIS」(新技術情報提供システム)にも対応しているなど、土木施工管理技士にとって助かるメリットが様々です。
「CALS Manager」(キャルスマネージャ)もまた施工計画書の作成に便利なソフトです。低コストで使用できるという特徴がありますが、用途としては施工計画書を電子版として納品するものになります。無料体験版を1年間使用できるので、一度使ってみることをお勧めします。
土木施工管理技士が施工計画書を準備する理由はほかにもあります。それは「管理業務の把握」です。施工計画書は、情報共有のツールであると同時に、土木施工管理技士自身が、担当している工事の内容はもちろん、進捗率の管理を行うために使うものでもあるのです。施工管理計画書があれば、工事の種類や資材等の細かい数量、規格などを把握しておくことに役立ちます。
施工計画書があることで工事の進捗率の改善・向上が期待できます。工事内容をきちんと整理して作成しておくことで、施工業者に工事の建材などを尋ねられたときにも、すぐに答えることができるようになります。「事務所に戻って仕様書を確認しなければわからない」といった状態では、把握や管理があいまいになっている証拠です。これでは、建設工事でミスが発生する可能性さえあります。
反対に、施工計画書をきちんと作成していれば、現在の工程の進捗はもちろん、その後の工程において必要になる資材や機械、作業員などの手配といった準備も先んじて行うことができますので、進捗率は格段にアップします。
また、施工計画書があれば、悪天候やアクシデントなど、もしもの場合に備えて、工程のスケジュール変更なども行いやすくなります。工事がとまってからでは遅いため、先んじた対応ができる施工計画書があれば便利です。
施工計画書に記載する内容は決まっていて、一定項目に分かれています。 一つずつ簡単に見ていきましょう。
土木業界ではよく「段取り八分」という言葉が使われます。読んで字のごとく段取りがきちんと整えばその仕事の大半は終わったも同然と言われるくらい準備が大事だということです。その準備の要である施工計画作成はとても重要な作業であることは言うまでもありません。
とは言え、一から作成するのはとても大変です。これまでの同種・類似工事の施工計画書をテンプレートとして作成することが最も効率的な作業となるでしょう。
作成中は頭の中で現場の進捗を思い浮かべながら策定していきますが、未経験の分野もあることかと思いますので上司や先輩にアドバイスを受けることが肝要です。
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