労働災害と公害を防いで、スムーズな工事のために不可欠な業務
安全管理とは、工事が始まってから終わるまで現場の作業員や関係者が事故にあわないように安全な環境を整える重要な業務です。予定通り工事を進めることにもつながります。
具体的な業務内容はミーティング、指差し確認といった基本的な管理から、大型機械による作業時の安全確保、足場の安全対策などさまざま。脚立一つといった細かい物まで労働安全衛生法や安全基準が細かく定められています。
また、安全管理を行うための体制も決められていて、現場の規模によって専任監理者を選定しなければいけません。
環境保全管理とは、工事を行うことによる大気汚染や水質汚染、植物への影響といった公害を防止するための業務です。工事単体で考えるのではなく、地球全体の環境まで考える規模と責任の大きい仕事といえます。
また、騒音や振動といった近隣に対する公害を防止するのも大切な仕事。産業廃棄物の取り扱いなども業務に含まれます。また、環境保全運動の高まりから、リサイクル法などにより資材のリサイクルも進んでいます。
安全管理、環境管理はともに、人を守るための業務といえます。 安全管理がおろそかになり労働災害が発生すると、作業している人はもちろん、近隣住民や通行人も巻き添えになりケガを負う可能性があります。 環境管理では、工事中の騒音や振動、水質悪化などへの配慮が必要であり、これを怠ると住環境、自然環境の悪化や健康被害へとつながる恐れがあります。
自分自身はもちろん、家族や大切な人を守るために必要な管理業務です。工事の進行に関係ないと思ってつい後回しにしてしまいがちですが、重要な業務だと認識して、気を引き締めて取り組みましょう。
安全と環境保全の分野は法律によって定められていることが多くあります。適当な管理で法律違反をしてしまうと重い罰則を受けることもありますから、「知らなかった」では済まされません。業務に当たる前に、関係する法律や基準などをしっかりと勉強しましょう。分からないことはあいまいにするのではなく、その都度確認を取るのも大切です。
安全管理に関しては、ただ決められたことを守っていればいいというわけでもありません。現場ごとに状況は違ってくるため、毎回同じ安全対策が通用するとは限らないからです。安全に工事を進めるためには現場での経験も重要な要素です。「これは危ないかも」と感じたら先輩に相談して、過去の事例などを聞いてみましょう。
作業員の慣れから、経験をもとに何となくの安全管理がおこなわれることも見受けられます。しかし、何かあってからでは取返しがつきません。「これくらいならいいか」を許さずに、決められたルールを徹底することが重要です。
現場で危ないことを感じた「ヒヤリ・ハット」を逐一記録して、誰でも閲覧できるようにして共有するのも大切です。現場全体・会社全体で危険に対する意識を共有することで災害や事故を減らすことができます。
作業中にヒヤリとした思いやハッとした経験があれば、事故や労働災害にならなかったとしても、同じ現場で働く作業員に必ず情報共有を行いましょう。「自分の不注意がバレて、怒られるかもしれない…」と隠してしまい、その経験を自分だけのものにしてしまうと、別な作業員が同じような危険にあった場合、怪我や労災を防ぐことができません。些細なことだと見過ごさず、気づいた時点で解決するために、動く必要があります。また、一人では難しいことでも同僚や上長にすぐ報告し、対策を取るなどできることから始めてみてください。
建設現場で起こりやすい、または事故につながりかねないヒヤリハット事例を紹介していきます。似たような事例を経験した場合は、ヒヤリハットの情報共有の参考にしてみてください。
建設現場の枠組み足場で、作業床に結束された資材に足をひっかけてしまい、高いところから転落しそうになった。とっさに足場に掴まったため、運良く転倒をまぬがれた。こういったヒヤリハット事例は珍しくありません。
このような事例の対策としては、「作業床の足場に段差が発生しないように組み立てること」。さらに、「資材などを放置しない」ことはもちろん、「資材に用いる紐や番線は足が引っかかるようなものは使用しない」ことが考えられます。
バックホーを操作してU字溝の吊り上げ移動を行っていたさい、既に動かしていたU字溝に接触してしまい、付近で作業していた作業員の近くに落下してしまった。運良く作業員に当たることはなかったが、非常に危険な状況だった。
一見、バックホーの操作ミスに思われますが、複数の要因が組み合わさって発生したヒヤリハット事例です。U字溝の釣り上げ移動の位置が、すでに動かしていた1段目のU字溝よりも低かったことに加え、バックホーの作業スペースに作業員が立ち入っていることも危険です。さらに、バックホーの運転者は作業スペース内の状況をきちんと把握しておくべきでした。
対策としては、吊り下げ移動を行う高さの確認はもちろん、バックホーの作業スペースにロープを張り、作業員が立ち入らないことを徹底しましょう。
ひとたび労働災害が発生すれば、作業員の健康、そして命にまで危険が及びます。建設業は、他の産業と比較しても労災事故の発生率が高い業種とされています。労働災害が起きないように、現場を担当する施工管理技士として出来ることは、多くあります。ここでは安全確保のためにできる事例を紹介しています。
建設現場の安全確保のために、大前提として取り組むべきことは、「労働安全衛生法」の遵守です。そのうえで出来ることは、「安全施工サイクル」を実行することでしょう。
建設現場の日常業務に、作業前点検やパトロール、安全工程に関するミーティングの時間などを取り入れてルーティン化したものを、安全施工サイクルと言います。毎朝、建設現場の作業員全員で行う安全朝礼も、大切なサイクルのひとつ。気の緩みが出ないように続けることが、安全確保につながっていきます。
安全を確保する建設現場ならではの活動名称には、「4S活動」や「KY活動」といったものもあります。
「4S」とは、整理、整頓、清掃、清潔それぞれのアルファベット頭文字を集めた言葉。これらを徹底して心がけることを「4S活動」と言います。整理整頓は安全対策の基本です。建設現場では、つまずきによる転倒が非常に多く発生していますが、整理整頓が徹底されていれば、つまづくことも防げます。
「KY活動」とは「危険予知活動」の略語で、現場での作業を開始する前に、作業グループごとにミーティングを行い、取り組んでいる作業に潜んでいる危険について共有したり、その回避策を考えたりする活動です。危険に関する現状把握から、その危険の本質を探り出して、対策と目標を設定する。ミーティングで話し合ったことは「危険予知活動表」のボードにまとめて、現場の目につく場所に設置しておきましょう。
建設現場で特に多いのが、「ヒューマンエラー災害」です。これは、人間ならではの特性が原因となってしまった事故や労働災害のことです。「未経験や不慣れな作業だった」「リスクを軽視してしまった」「連絡不足だった」「錯覚していた」「本来やるべき行動を省略してしまった」といった失敗の根底には、個々人の性格ではなく、人間だからこそ考えてしまう本能的な特性が働いているのです。
このような「ヒューマンエラー」は、人間の特性について認識を深めることで避ける助けになります。例として「場面行動本能」を紹介してみましょう。工具の落下を避けようとして身を乗り出してしまい、自分が落下してしまう、といった行動が当てはまります。こういった本能的な行動は避けること自体は難しいですが、そのことを認識しておけば、常に安全帯を着用することの重要性を伝えることができ、事故の発生を防ぐ助けになるでしょう。
建設現場における危険性の除去には、「リスクアセスメント」という手法が使われています。現場に潜むリスクの特定や分析、さらにはその評価を行うプロセスを通して、建設現場の安全性を確保するのです。
リスクアセスメントは、まず建設現場に潜む危険性や有害性の洗い出しから始めます。洗い出しは、過去に発生した労働災害やヒヤリハットの報告例、安全パトロールで発見された事項などをもとに行いましょう。
次に、洗い出したリスクの評価を見積もります。それぞれのリスクの重大性を評価することで、それらの危険性や有害性の対策を優先度合いを明らかにするためです。見積もりは、事故・災害が起こる可能性と起こった場合の重大性を点数化し、それぞれを計算して総合点を導き出します。見積もった数値にそって、対策の優先順位をつけていきます。
どのリスクを優先的に対策立てていくのかが明らかになれば、それらを低減させる措置を検討します。危険な作業であれば、より安全な作業内容に変更したり、廃止を検討しましょう。作業エリアに関する危険性であれば、ガードの設置や有害性を除去するための排気管の設置などを考えましょう。立ち入り禁止の措置は、ただガードを設置するだけではなく、作業員に対する教育訓練などもセットで行いましょう。
検討したリスクの低減措置を実施すれば、最後にその実施結果を記録して、後の現場作業に生かしていきましょう。
作業する建設現場に入場する前に、その現場で気をつけなければならないポイントやルールについて、元請業者や管理責任者から必ず説明を受けましょう。
こういったポイントは必ず確認しなければなりません。
建設現場で作業に取り掛かる前に、使用する工具の始業前点検を行い、工具に異常や不備はないか確認しましょう。落下防止の紐やヘルメット、靴などは、特に入念に調べましょう。もしも修理や取り替えが必要であれば、すぐに行います。作業を終える際は、同じように確認・手入れを行う習慣を身につけておきましょう。
工事の安全は何よりも優先されます。事故は工事従事者のみならずその家族までも不幸にしてしまいます。
高い安全意識と安全衛生法などの法令遵守、そして現場では構内道路の通行規制や高所作業時にはハーネス型の安全帯着用、熱中症対策、段差解消や昇降施設の設置など様々な現場での安全に作業を行える工夫が必要となります。
安全管理は個だけではなく、全体で意識を高めなければなりません。よって施工管理者は率先して安全管理に取り組まなければならない立場にあり、人を守る重要な役割を担います。
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