長時間労働が常態化している会社も多い
施工管理に限らず土木建設業全般に言えることですが、残業が多く朝早くから夜遅くまで働いているというイメージが定着しています。
実際に現場で施工管理に関わっている方の声を聞くと、月間100時間以上の残業が常態化している会社も珍しくありません。月間100時間ということは、1日に換算すると4~5時間の残業ということになり、なかなかの長時間労働です。
なぜこのように長時間の労働がされているかというと、施工管理の仕事は現場での業務に加え、事務所での書類作成など多岐にわたっていることが挙げられます。日中は現場でやることが多く事務処理がたまってしまい、陽が落ちて現場が片付いてから事務仕事を始める。そうすると自然に残業が長くなってしまうというわけです。
また、天候に左右される工事現場の遅れを取り戻すため、一日の作業が多くなることも多くあります。さらに、現場にトラブルが発生すれば、原因の究明や後始末など通常業務以外の仕事が発生し、なかなか帰ることができません。
こうした状況は高度経済成長期には日本全体で当たり前に行われてきたことです。最近では長時間労働の改善に取り組んでいる企業も増えてきました。しかし、土木建設業界は平均年齢が高いこともあり、「下積み時代は買ってでも苦労をしろ」といった長年の慣習が根強く残っている会社があるのも現状のようです。
実は施工管理技士という職種は、転職が多いことでも知られる仕事。転職が多い理由の一つが、「残業が多いから」ということでもあるようです。
施工管理の現場において残業が多い理由を、もう少し具体的に見てみましょう。
施工管理技士は、そもそも与えられている仕事の絶対量が多いと言わざるを得ません。
現場での仕事の始まりは朝8時ごろ。現場に到着して朝礼が行われるわけですが、施工管理技士はその30分から1時間前には現場へ到着し、1日の作業の準備をしていることが大半です。
挨拶、作業内容の確認、安全確認、点呼などが朝礼で行われたのち、現場作業がスタート。作業員の人数が不足している場合や工期が近づいている場合には、施工管理技士自らが作業員として働かざるを得ないこともしばしばです。
夕方になると作業員の仕事は終わりますが、施工管理技士の仕事はまだ続きます。日中にはできない事務作業です。この事務作業も、決して少ない仕事量ではありません。結果として深夜11時ごろまでかかってしまうこともあるようです。
そもそもの仕事量が多いことが、施工管理技士に残業が多い最大の理由と言って良いでしょう。
仕事の絶対量が多い職種は、世の中に施工管理技士だけではありません。しかしながら他の業界においては、仕事の量に対応した人数を投入することが一般的です。それに対して建設現場では、膨大な仕事量に対して配置される施工管理技士の人数は1~2名程度が普通。必然的に、1人あたりに課せられる仕事量が多くなってしまいます。
現場に適正人数の施工管理技士を配置できない理由は2つ。1つめが人手不足です。団塊世代の退職と少子化による労働人口の減少、および、やや上向きつつある景気の影響により、日本では人手不足が深刻化しています。中でも特に人手不足が深刻な業界の一つが、建設業界と言われています。
2つ目の理由が、コスト削減による採用人数の制限。会社にとってコスト削減は大切な経営戦略の一つですが、行き過ぎると会社そのものの首をしめることにもなりかねません。経営陣の賢明な判断が望まれます。
世の中には、たとえば役場のように定時で終わることが文化となっている職場もあれば、クリエイティブ職のように残業することが文化となっている職場もあります。建設業界がどちらとは言えませんが、少なくとも施工管理技士という職種は典型的な後者。長時間残業をすることが、もはや文化となっている一面があります。もはや文化を通り越して「残業が美徳」となっている会社も少なくありません。
当然ですが、文化を変えることは非常に難しいもの。一朝一夕の会議で決められた約束事などでは、到底、会社の文化を変えることなどできません。
そのため施工管理技士の中には、「早く帰れるにもかかわらず、先輩や上司の手前、帰るわけにいかない」という状況に陥っている人もいることでしょう。
「自分たちも若いころは同じ苦労をしてきたのだから、今の若い者たちも同じ苦労をすべきだ」という非論理的な意識を捨て、壊すべき文化は壊すという合理的な発想を業界は持つべきでしょう。
近年、首都圏を始め、関西や名古屋、福岡などの大都市圏を中心に、都市開発にともなう建設ラッシュが続いています。とくに首都圏での建設ラッシュは著しいものがあります。
この特需が長く続くものなのか、それとも2020年を機に下火となるものなのかは、まだ分かりません。ただし現実として、今は需要に対して供給が追いついていないことは紛れもない事実です。
建設現場に施工管理技士を配置しなければならない法令がある以上、監督たちの残業が減ることは、現状、なかなか考えにくいのかもしれません。
2024年に向けた政府主導の働き方改革とは別に、建設業界全体での自主的な働き方改革の議論も進んでいます。
大手ゼネコンを中心とした151の建設会社が加盟している「日本建設業連合会」は、長時間残業が常態化している業界の体質を変えるべく、残業時間の自主規制を議論しています。
具体的な議論の内容は、年間の残業時間の上限を960時間にしようというもの。月間の残業時間に換算すれば、80時間までの残業を上限とする、という内容の自主規制です。
月80時間の残業でも決して短いとは言えませんが、100時間以上の残業が常態化している会社も多い建設業界においては、とても画期的な案。以後も段階的に残業時間の上限を短くしていくとの方針です。
なお、建設業界におけるこの方針に対し専門家は「大手ゼネコンほどルールを遵守する傾向が進み、規模の小さい建設会社ほどサービス残業の時間が増えるだろう」と予測しています。結果として、大手ゼネコンと小規模企業との間では、実質的な時給の差が開いていくと説明しているようです。
自主規制の動きが業界全体にどのような影響を及ぼすのか、まだ予断を許しません。今後の業界の変化に注目していきましょう。
長時間労働などの日本全体が抱える労働課題を解決するため、政府主導で働き方改革が進められています。中には長時間労働の改善などのテーマも盛り込まれていて、長時間残業の改善に効果が期待できます。
具体的には残業時間の上限を設けて、違反した企業には罰則を設けるというもの。罰則付きの影響が大きい法案のため、完全施行されれば建設業の長時間残業も改善されるでしょう。
気になる施行タイミングですが、適用のスタートは2024年を目安としているようです。「あと五年もあるのか」と思うかもしれませんが、悲観することはありません。
多くの人間が関わる建設現場では、急に残業を減らすことはできないでしょう。そのため、2024年までに少しずつ改善を進めていく必要があります。実際に大手ゼネコンなどは既に労働状況の改善に着手しているところも多く、今後は中小企業にも波及していくでしょう。
古い慣習が取り払われて労働環境が改善されれば、若くて優秀な人が集まり、さらに環境が良くなるという好循環が生まれます。ほかの業種と比べて労働時間が長いと言われる建設業だからこそ、働き方改革の効果も大きいものになりそうです。
土木建設業界では、業務量の多さや人手不足の影響で、長時間労働が当たり前となっている会社も少なくはありません。長時間労働に抵抗がある人の中には、「派遣社員」として働き方を変える人もいます。派遣社員なら、残業を気にしないで土木施工管理として働くことが可能です。
建設会社の正社員がサービス残業や長時間労働をしている話は少なからずありますが、派遣社員はその点については必要以上に気を使う必要がありません。
派遣社員は、所属している派遣会社が派遣先の企業と契約を結ぶことで、雇用が成り立っています。必要以上に残業や長時間労働をさせた場合は契約違反となるので、派遣先の企業は下手なことができません。
派遣先の企業から残業を求められたときは、余計なことを考えずに、自分の都合でする・しないの判断をすることが可能です。残業をした場合は、働いたぶんの給料が派遣会社から振り込まれます。
万が一、派遣先の企業がしつこく残業を求めてきたとしても、所属している派遣会社に報告すれば、代わりに対応をしてもらうことが可能です。
また、企業側も、基本的には、なるべくなら派遣社員を残業させたくないという考えを持っています。理由は、正社員よりも派遣社員の方が人件費が高くつくからです。現場の人員状況にもよりますが、この点も正社員よりも残業が発生しにくい要因のひとつに挙げられます。
「派遣労働」という言葉から、「仕事がつねにあるかわからない」「不安定なのでは?」「給与が低い」といったイメージがあるかもしれません。実際、不景気や経済ショックなどで「派遣切り」が行われるケースもあり、不安を覚えることもあるでしょう。
しかし、施工管理技士の派遣については、不安定でもなければ、給与も低いわけではない、というのが現在の状況です。なぜなら、施工管理とは技術系の職種になるため、特別な技術がなくても誰でも行える一般の派遣職とは異なるからです。施工管理の仕事で派遣された場合、月給が50万円を超えることもあり、技術系の派遣職が他の派遣職種とは大きくことなることがわかります。
残業を含めた労働環境についても、同様に、技術系の派遣社員特有のメリットがあるのです。
施工管理技士の派遣が、安定的かつ高級である理由は、建設業界全体の人材不足が大きな背景となっています。
建設業界の労働者は1997年をピークに減少を続けています。 今後の業界における労働人口の予測をみても、建設業界の就労者における高齢化が大幅に進行しており、今後10年間で約80万人もの労働者が引退をすることが予想されています。業界全体での就労者は約330万人ですから、今後、大変な人材不足がやってくることを示しています。一方で、建設業界における10代、20代の若い労働者は、約10%しかいないのです。
とりわけ、施工管理技士は、技術職ということもあり貴重な人材。反面、人材不足も深刻になっています。誰でもできるわけではない貴重な職種だからこそ、労働環境の整備も進み、残業なしで働くという選択を行うこともできるのです。
建設業界はこれからも人材不足が進んでいきます。AIやICTの技術が導入されることで改善できる部分もありますが、技術系の職種に対するニーズが減少することはないでしょう。むしろ、施工管理技士という特に人材不足が著しい職種であれば、派遣として働く労働者に対する高い需要は続いていきます。
施工管理技士はスキルが求められる仕事ですから、高いスキルを持つ人であれば、派遣先の企業から継続して働くことを求められたり、転職スカウトを受けることも珍しくありません。施工管理技士として様々な現場を経験することにもつながるため、派遣として施工管理技士の仕事を行うことは将来性があると言えるでしょう。
残業なしで働けるほかにも色々なメリットがある土木建設業界の派遣社員ですが、もちろんデメリットがないわけではありません。雇用体系で迷っている方は、派遣社員を選択した場合のデメリットも把握しておきましょう。
企業側は正社員を雇用して、教育をしたり経験を積ませたりして有能な人材を増やすのが理想ですが、思い通りに人材が確保できないことも珍しくはありません。
人手が足りないときの代わりとして、派遣社員が選ばれますが、そのときは正社員の給料よりも高いコストが掛かる場合が多いです。「高額な費用を払うかわりに一時的な人手不足を解消したい」と企業側が考えている場合は、戦力になれるレベルの能力が求められることになります。
土木建設業界は、未経験者よりも技術や経験のある人材が求められることが多いです。土木建設の経験がなかったり浅かったりする方が派遣社員になるときは、いまの能力でも構わないかをしっかりと確認するようにしましょう。
企業によっては、派遣社員には必要以上に仕事を任せないケースがあります。派遣社員を人手不足のときの補充要員としか見ていないときは、雑務や単調な業務しか回ってこない可能性が高いです。
その環境下だと、キャリアアップしたい気持ちが強くある方は、物足りなさを感じてしまうかもしれません。
派遣として働く場合、中小の建設企業が派遣先になる場合もあります。中小ゼネコン企業は、大手企業と比べて労働環境等が整っていない場合もあるため、人材不足もあいまって、契約外の業務を割り振られてしまうことも少なくありません。
契約外の業務のなかには様々な小さな雑用も含まれることがあり、人によっては負担を感じてしまうケースも。当然、契約外の業務を行う必要はありませんが、実際のシーンとなれば断ることが難しいことも。「契約外の仕事なのに…」と考えれば考えるほど、理不尽さやストレスを感じて、消耗してしまうのです。
派遣労働を行う場合、給与形態が正社員とは異なる場合があります。契約内容や派遣先の企業の労働環境によってもケースバイケースですが、派遣先が中小のゼネコン企業である場合は、給与形態が時給制であることも。施工管理技士であっても、雇用形態が異なるため、現場によっては時給制になってしまうのです。
時給制のデメリットは、現場が閉所になる休日や祝祭日になれば、給与が発生しなくなってしまうことです。正社員であれば月給制ですから、休日に関わらず、給与は支給されます。
また、契約内容によっても異なりますが、時給制の場合、同じ理由で有給休暇がない、あっても取得しづらい、という事情があります。派遣先が中小ゼネコンである場合は、人材不足ゆえに、休んだ分だけ自分にかえってくることにもなりかねないでしょう。
派遣で働く場合、最もデメリットに繋がりやすい要素は、派遣会社選びです。これは逆に言えば、派遣会社が良いところであれば、派遣として働くメリットを得やすい、ということに繋がります。
自分がどの派遣会社で働くのかによって、派遣先企業=仕事の数、給与、研修や福利厚生の制度が異なってきます。とりわけ、施工管理技士としての経験がまだそれほどない方であれば、必要な業務知識をしっかりと身につけられるように、研修制度が整っている派遣会社でなければ、派遣先で無理な業務を行わなければならなくなってしまうかもしれません。
派遣先を決めるにあたっても、派遣会社が断れないような、一方的な仕方で提案をしてくるのであれば、仕事内容が自分の希望と合っていないことになるでしょう。このように、自分に合う現場をきちんと選ぶことができる派遣会社を選ぶことが重要なのです。
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