地面の中に円柱状の改良体をつくって、地盤を改良するための工事「柱状改良工法」。こちらでは、柱状改良工法をわかりやすく解説していきます。工事内容や特徴、施工手順、そして工事をおこなう際におさえておくべき注意点などについてみていきましょう。
柱状改良工法は、地盤を安定させるために、地盤の内部に「改良柱体」をつくる工法です。
粉体のセメント系固化材を水と混ぜ合わせてスラリー状にし、低圧ポンプを使用してそれを地盤の中に注入していきます。そして、攪拌翼(かくはんよく)で土と混合攪拌します。こうすることで化学的に固化し、円柱状の改良体を成柱します。地盤改良工事にはさまざまな種類がありますが、この柱状改良工法は、深層地盤改良工法のひとつです。
戸建て住宅などの小規模な建築物から、工場などをふくむ中規模の建築物までを対象とした新装地盤改良工事として、広くおこなわれています。
深さでいうと、おもに、2メートル以上8メートル以下である場合に、一般的に採用される工法です。8mまでであれば、他の工法よりも柱状改良工法のほうが工期を短縮しやすいからです。たとえば、杭の数が30本ほどであれば、数日間ですべての施工を終えることができます。また、コストをおさえやすいことも、この工法が採用されやすいもうひとつの理由となっています。
さまざまな施工現場の条件に対応できるところが、柱状改良法のメリットだといえます。例えば、地下水位があるケースでも、それほど大きな影響を受けません。また、傾斜地盤にも対応できますし、構造物に面していても問題なく施工できます。また、改良による残土発生量をおさえられるところも、注目ポイントです。
【1】施工の準備として、近隣住民へのあいさつや養生、施工前の敷地全英状況の撮影などをおこないます。交通整理の手配なども忘れないようにしましょう。準備がととのったら、施工機械を設置し、攪拌装置をロッドの先端部に取り付けます。
【2】固化材と水を混ぜ合わせ、セメントスラリーを生成。低圧ポンプで、それを攪拌装置へ送ります。
【3】攪拌装置によるセメントスラリーの注入と並行して、地盤と混合攪拌をおこない、掘削を進めていきます。作業中は、拌装置の深度や回転数、セメントスラリーの流量などが、専用機器で測定・管理されます。
【4】 決められた深度に到達後、先端処理をして撹拌混合しながら先端翼を引き抜き、固化するまで養生します。
小規模建築物・中規模建築物の一般的な地盤改良校工法として広く採用されているのが、この柱状改良工法です。8m以下の深さであれば安いコストで工事ができ、かつ、工期の短縮も可能です。また、残土発生量をおさえやすく、傾斜地盤にも対応できるなどメリットの多い工法ですが、おさえておきたい注意点もいくつかあります。
柱状改良工法は、現地の土とセメント系固化材とを混ぜて補強体をつくっていく工法であるため、固形不良のリスクを考慮に入れておく必要があります。特に、セメントがかたまりにくい土地の場合は要注意です。固化しにくい土の種類は複数ありますが、中でも、強い酸性の土はセメントの固化を阻害するはたらきがあります。
具体的には、火山灰質粘性土や腐植土などです。こういった土に相性の悪いセメント系固化材を使ってしまうと、固形不良の結果、建物の不同沈下を引き起こすリスクを高めてしまいます。
次のような土地では、柱状改良工法はおすすめできません。
柱状改良工法を施した土地は、原状復帰が簡単ではないことも、あらかじめ把握しておきましょう。撤去費用にかかる費用は決して少なくありません。ですから、土地の価格は低下します。工事を実施する際には「将来土地を売却する予定があるのなら、価格が低下してしまうことがあるため、他の工法がおすすめ」だという旨を事前に伝えておく必要があります。
本サイトの監修・取材協力企業
株式会社ティーネットジャパンとは
発注者支援業務において
日本を代表する企業
株式会社ティーネットジャパンは、公共事業の計画・発注をサポートする「発注者支援業務」において日本を代表する建設コンサルタントです。
建設コンサルタントにおける『施工計画、施工設備及び積算』部門の売上げで22年連続業界1位を獲得(『日経コンストラクション』2024年4月号「建設コンサルタント決算ランキング2024」)。主に官公庁の事務所に拠点をおいた業務のため、官公庁に準じた完全週休2日制。ゆとりある環境です。