一般的な土木工事現場の施工管理とは違い、発注者側の立場で工事に携わる発注者支援業務には様々なメリットが。それぞれの視点で1つずつ見ていきましょう。
退社時間や休日は官公庁に準じる
発注者支援業務の求人を見ると、「ワークライフバランスを重視してプライベートを充実できます」という文言をよく見かけます。実際に求人の内容を詳しく見てみると、残業が少なく、週休二日制を採用しているところが多くあります。
労働環境が厳しい土木業界の中で、発注者支援業務が良好な環境を保てているのは、官公庁の職員と机を並べて働くためです。基本的に発注元である国や地方自治体の事務所で仕事をするため、まわりはみんな公務員。多少の残業はあるかもしれませんが、政府主導の「働き方改革」の推進からハードな残業は少ない傾向にあります。
また、官公庁は基本的に土日休みですから、土日は業務自体が動いていません。そもそも事務所が開いていないため、休日出勤するというケースも民間の仕事に比べると少ないでしょう。
土木建設業界で働く醍醐味を実感できる
官公庁が発注する公共事業には、高速道路、橋梁、ダム、トンネル、災害復興など大規模な公共事業が多くあります。発注者支援業務では、おのずとさまざまな大規模プロジェクトに関わることができ、技術者としてのスキルを経験や実績を積むことができます。
土木建設業界で働く醍醐味を感じられるでしょう。
一つの事業に対して発注者と受注者二つの視点を得られるのも大きなメリット。土木工事全体の流れを理解でき、スムーズな管理ができるようになるでしょう。
工事の上流の立場として、能動的に仕事を動かしていく感覚も養えます。工事以外の部分でも、リーダーシップを発揮するためのスキルを磨くことができます。
工事立案段階の計画や設計にも関わることになり、正確性などの高いスキルが求められるため、仕事をこなしていると自然にスキルアップしやすいです。要求される仕事のレベルが高く業務内容が多様な分、年収も高くなる傾向があり、民間の請負業務から転職すると年収アップしやすいでしょう。
発注者支援業務は、一般人は入れない場所での仕事を行えます。国土交通省などが発注者になるため、道路や橋、ダムなどの公的工事に携わることが可能です。普段は入れないような場所で仕事ができるため、高揚感が得られるようなできごともあるかもしれません。
基地などの特殊な場所では石ころ1つ落としておいてはいけないなど、細やかな清掃・点検が必要となりますが、それもそのような場所でしか経験できないことでしょう。
また工事完了後にはたくさんの人が道路を利用し、橋やダムへ訪れるようになります。工事に携わった場所のほとんどは地図に一生残り、地域の人たちが利用してくれるのです。
工事においては最短ルートで効率良く、できるだけ最小の費用で行うのがベストとされています。これらを実現するため、発注者支援業務では製品や工法、行政情報といった様々な項目における最新の情報を入手できるのです。土木業界のあらゆる工種で常に最新の情報を入手し、これらを駆使することで、発注者のニーズに沿った業務を行えるでしょう。
そのため、「常に新しい情報を仕入れたい「日々勉強を怠りたくない」という人には最適な仕事だと言えます。新しいものに興味をそそられるという人にとっては、たまらない仕事かもしれません。現場に行く度に変化があるため、毎回同じ仕事では飽きてしまいやすい人でも長く続けられる仕事です。
発注者支援業務は準公務員という立ち位置ですので、コンプライアンスの遵守が非常に重要となります。監督支援業務では現場の進行をスムーズに行うために、受発注者間との報告・連絡・相談を徹底して仕事を行わなければなりません。
また現場の危険因子にいち早く気付き、安全面に不足がないよう徹するのも大切です。これは業務における「当たり前のこと」ですが、実際に現場に出て経験しないと身に付かないスキルでもあります。
工事における規定は慣れも必要です。公的工事におけるコンプライアンスのベースは、何度も工事に携わることで知識として身に付いていくでしょう。
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たくさんのメリットがある反面、デメリットも存在します。事前に頭に入れて、的確に対処できるようにしておきましょう。
発注者支援業務は高いスキルが求められ成長のチャンスになる反面、プレッシャーも大きくなるといえます。関係者との折衝や発注者とのやり取りなどのコミュニケーションスキルや、関係者を動かしていく立場としてのリーダーシップも求められます。
また「正確性」も重要なスキルの一つ。現場で確認を行う際に、設計図通りに仕上がっているか、大きな構造物の中の小さなズレ一つでも気付けるレベルの繊細さがないと品質を保つことができません。
「柔軟性」も必要不可欠です。土木工事は事前に綿密な計画を立てますが、いざ現場が始まれば計画通りに進まないもの。現場の状況に応じて危険な箇所を報告したり、関係者と協議・調整をはかったりといったフレキシブルな対応力が求められます。
残業が少なく、休日がしっかり取れるのは大きなメリットですが、裏を返せば少ない時間のなかで業務をこなさないといけないということ。業務内容は決して少なくありませんので、効率の良い仕事が求められます。
チームを組んで仕事をするため、自分と周りのスケジュールを合わせる調整力も必要になります。
これは、発注者支援業務に限ったことではありませんが、屋外での仕事がメインとなる土木工事の現場は、スケジュールが天候に左右されることも少なくありません。
台風などの大きな災害などで工事がストップすると、期日までに工事を仕上げるため休日返上もあり得ます。また、被災直後は復旧作業に追われるため、残業や休日出勤は必要となります。
特に公共事業は工期の遅延が許されないケースが多いため、このようなケースも覚悟しておきましょう。
発注者支援業務の給与は月収約185,500円~400,000円で、ここに別途手当が付きます。また経験やスキル、年齢などによって給与が変動していきます。
例えば28歳で未経験の人であれば、月額25万円程度+各種手当=年収400万円程度になりますし、40歳で経験年数が15年ある人なら、月額37万円程度+各種手当=年収600万円程度となるでしょう。土木業界は経験やスキルが何よりも重要となりますので、それらを満たしている人は自ずと年収も高くなります。
発注者支援業務の給与例を紹介します。
応募を検討する際は給与や年収だけを見るのではなく、手当や残業の有無、休日制度など「どんな働き方をしてどのくらい稼げるのか」をしっかり確認しましょう。また、「将来的に収入アップは見込めそうなのか」を判断するために、昇給のチャンスがあるかどうかもチェックすることが大切です。
給与 | 185,500円 ~ 400,000円 + 別途手当(経験・スキル・年齢など考慮) 【年収例】 400万円/28歳・未経験……月額25万円+残業手当・一律手当 540万円/35歳・経験10年…月額35万円+残業手当・一律手当 600万円/40歳・経験15年…月額37万円+残業手当・一律手当 |
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手当 | 通勤手当(上限6万円)、時間外勤務手当、休日勤務手当、単身赴任手当、資格手当、転居一時金、ほか |
昇給 | 年1回(7月) |
賞与 | 年2回(6月、12月) |
勤務地 | 北海道・東北・北陸・関東・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄 |
休日 | 年間休日121日、完全週休2日制(土・日・祝日)、年末年始休暇、夏季休暇(シーズンホリデー)、年次有給休暇ほか |
A社の年収例を見てみると、未経験の20代で年収400万円、経験10年の30代で年収540万円とあります。業界の中では高給というほどではありませんが、時間外手当や資格手当もあり、完全週休2日制で年間休日は121日確保されています。
土日祝が必ず休める環境のため”働くこと”と”しっかり休むこと”を分けられ、メリハリをつけて働けそうです。
また、A社の求人の注目すべきポイントは、年1回の昇給と年2回の賞与が明記されていること。とくに年1回の昇給があることで、経験を積みスキルをつければ給与アップも見込めそうです。
給与 | 月給65万円~100万円 月40時間分のみなし残業手当(14万7000円~23万円)含む。超過分は追加支給。 【年収例】 1058万円/49歳・入社15年目 900万円/45歳・入社12年目 800万円/55歳・入社9年目 |
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手当 | 休日出勤手当ほか |
昇給 | 記載なし |
賞与 | 記載なし |
勤務地 | 東京都大田区羽田空港ほか、東京都 |
休日 | 土日祝休、夏季休暇、年末年始休暇、産前産後休暇、育児休暇、介護休暇、有給休暇、慶弔休暇 ※休日出勤した場合、手当を支給 |
B社の給与は月給65万円~100万円と、業界トップクラスといえそうです。入社15年目の49歳で年収1058万円の例があり、しっかり働いてしっかり稼げそうです。
ただし、月給には月40時間のみなし残業手当が含まれています。40時間を超えた分は追加支給されますが、残業が多めの会社だと認識した方がよさそうです。それでも月給65万円以上はなかなかない求人のため、応募の候補に入れる方も多いのではないでしょうか。
給与 | 月給53万円 |
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手当 | 確定拠出年金、単身赴任の場合は社宅を用意。通勤手当、時間外手当、深夜勤務手当、赴任旅費支給、帰省旅費支給 |
昇給 | 記載なし |
賞与 | 記載なし |
勤務地 | 神奈川県横浜市 |
休日 | 土日祝 |
神奈川県横浜市での勤務です。月給53万円と給与は高め。手当は通勤手当や時間外手当、深夜勤務手当などが用意されています。
ただ、昇給や賞与、休日などの詳細な記載がないのが気になるポイントです。特に休日は土日祝とだけあり、週や月にどのくらい休めるのかがわかりません。どのような働き方で月収53万円稼げるのかが大切ですので、応募を検討する場合は詳細をしっかり確認することが大切です。
給与 | 年俸制(月額換算:年俸÷12ヵ月で4,200,000円~7,200,000円) 基本給(月額平均)又は時間額350,000円~600,000円 |
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手当 | 資格手当5,000円~30,000円、赴任手当・帰省手当(遠方地勤務の場合)、通勤手当(実費支給・上限なし) |
昇給 | 記載なし |
賞与 | 年俸制 |
勤務地 | 東京都 |
休日 | 土日祝他、週休二日、夏季休暇、年末年始休暇、年間休日数125日 |
D社では年俸制を採用しており、年収420万円~720万円ほど。月額で35万円~60万円であり、資格を取得すると最大3万円の手当がつくようです。通勤手当も上限なしで実費支給してくれるため、交通費負担の心配がありません。
また、年間休日日数は125日とありますので休暇はしっかりとれるようです。
発注者支援業務をおこなうにあたって重要なのが、正確さや柔軟さ、協調性ではないでしょうか。
指示された内容を正確におこなうこと、トラブルや危険に柔軟に対応できること、発注者や受注者と良好な関係を築けることなど、発注者支援業務を円滑に遂行するために必要な要素をもっていなければなりません。もちろん資格や経験、実績は給与アップに重要なポイントですが、正確さ・柔軟さ・協調性に欠けていては「この人には発注者支援業務を任せられない」と思われてしまいます。
日ごろから指示事項をしっかりと確認して事故やクレームなどの危険性に配慮し、円滑なコミュニケーションができるよう誠実に仕事をすることが給与アップの土台となるでしょう。
発注者支援業務の求人では発注者支援業務の経験や施工管理経験、土木施工管理技士2級以上が応募資格の企業が多いようです。つまり発注者支援業務者として働くための最低限必要の要素ということであり、給与アップを目指すには応募資格以上の経験や資格が必要だということです。
とくに資格取得は給与アップにつながりやすく、求人情報でも“資格手当〇〇円~〇〇円”という記載を多く目にします。発注者支援業務に関連する資格を取得できれば、資格手当がつきおのずと給与もアップするでしょう。
発注者支援業務に関連する資格としては「土木施工管理技士2級・1級」「RCCM」「コンクリート技士」「測量士」「技術士」などが挙げられます。これらの資格を取得して、確実な給与アップを目指しましょう。
給与アップがかなう背景には「正確さ・柔軟さ・協調性などの発注者支援業務の担当者として重要な要素を身に着けていること」や「資格を取得すること」などがあると説明しましたが、「大きな現場の仕事を任せてもらえるようになる」ということも給与アップにつながるでしょう。
発注者支援業務の求人をおこなっている会社はいくつもありますが、高速道路や河川事業などに特化している企業もあれば、さまざまな種類の事業を幅広く手掛けている企業もあります。
さらにいえば、発注元が県や地方自治体の場合もあれば、国交省など規模もさまざま。とくに国交省が発注元などの大規模事業であればステップアップもしやすいかもしれません。給与アップを狙うのなら「国交省などが発注元の大規模事業を手掛けている企業」に転職するのもおすすめです。
発注者支援業務に就くとすぐに自らの取り組み方で働きかたを変えられることを実感できます。扱う業務内容の理解を深め、クライアントである発注者が今、何が必要なのかを常に報告連絡のコミュニケーションを行い、先回りした業務対応を行うことで業務の効率化が図れます。よって無駄な残業はなくなり、プライベートな時間を生み出せ、公私とも充実した日々を送ることができることになるでしょう。
デメリットは予期せぬ自然災害対応です。国土を守る仕事でもあるわけですから避けては通れません。毎年、台風や大雨で被災する地域があり、緊急体制下に入り待機することもあります。大切な家族を守る、ひいては国民の生命と財産を守る崇高な仕事でも有るわけですから誇りが持てるしごとです。
本サイトの監修・取材協力企業
株式会社ティーネットジャパンとは
発注者支援業務において
日本を代表する企業
株式会社ティーネットジャパンは、公共事業の計画・発注をサポートする「発注者支援業務」において日本を代表する建設コンサルタントです。
建設コンサルタントにおける『施工計画、施工設備及び積算』部門の売上げで22年連続業界1位を獲得(『日経コンストラクション』2024年4月号「建設コンサルタント決算ランキング2024」)。主に官公庁の事務所に拠点をおいた業務のため、官公庁に準じた完全週休2日制。ゆとりある環境です。