一連の作業のうち、どの部分に負荷をかけるか、という問題に関する考え方のひとつに、「フロントローディング」があります。将来、土木施工管理技士として活躍していきたいと考えている方は、こういった土木業界や建設業界のトレンドを把握しておくことも大切です。
このページでは、フロントローディングについて、その考え方のベースや目的、フロントローディングを実施する際の流れ、メリット、便利なツールなどを解説していきます。
フロントとローディングを合わせた言葉です。フロントが「初期」を、そしてローディングが「負荷をかける」を意味するので、まとめると「初期に負荷をかける」という意味になります。つまり、フロントローディングとは、全工程のうち、初期の工程に負荷をかけるという考え方を表す言葉であるといえます。
建築業界においては、初期工程のひとつである「設計」に負荷をかける、という意味合いで使用されます。これまでのような、施工を進めつつ、必要に応じて設計を見直していく手法ではなく、初期の設計段階でシミュレーションや検証を幾度も重ねることで、設計を初期の工程内ですべて完了させることがねらいです。つまり、作業を前倒しするかたちになります。
その結果、フロントローディングという言葉が示すとおり、設計の工程に負荷のピークを置くかたちになるので、続く施工の工程においては、負荷を軽減することができるのです。
建築現場では、初期工程の設計にまったく変更を加えることなく完成に至る事例は、あまり多くありません。施工の途中でなんらかの設計変更が必要となるケースのほうが、一般的です。
その際には、予算や工程を見直さなくてはならなくなるため、現場監督である土木施工管理技士にとって、大きな手間がかかることになります。フロントローディングを導入すれば、そういった設計変更による負担を軽減することにつながります。
【1】人材の配置をおこないます。まずは、意思決定権限がある施工系のスタッフを適した場所に配置しておきます。施工方針を設計者に伝え、かつ、生産の立場からプロジェクトに有効であると考えられる情報を提供していくのが、そのスタッフに与えられた役割です。
【2】プレキャスト化や鉄骨の柱・梁仕口部の仕様、既存地下躯体の本施利用など、主要構造に関わる構工法などを設計担当者に提案します。
【3】設計図書の整合確認を実施します。実施設計段階で、設計情報と生産情報を照合させるために、設計者が作成した図書をベースにして施工者が施工図を作成します。着工前に、未決事項の整理や情報共有、コスト計算などを忘れずにおこないましょう。
設計者の負担が重くなる場合が多いです。というのは、フロントローディングを導入すると、設計の初期段階でさまざまな部門との打ち合わせが必要になるからです。しかも、再設計を繰り返していかねばならないので、設計者の仕事量はかなりのものになるでしょう。その場合には、設計工事全体の責任者を別に設けるなどして対応していくことが求められます。
便利なソフトを導入してフロントローディングをおこなうことで、工程全体の効率アップにつなげられます。複数のソフトを併用するのもおすすめです。
設計をおこなう部門などでひろく導入されている、図面を作成するためのソフトです。「2D CAD」「3D CAD」のふたつがあります。前者は企画や設計、ミーティングなどの場面で、そして、後者はおもに施工現場で、それぞれ使用されることが多いです。
CAMは、上述の「3D CAD」を使って作成した図面にそって加工プログラムを組み、工作機械に落とし込んで図面通りに制作を実施させるためのソフトです。かつてはデータの打ち込みを手作業でおこなっていた建設会社も、このソフトが登場したことで、その手間を大幅に省くことが可能になりました。
また、加工プログラムを組むだけでなく、加工にかかるおおよその所要時間の算出も可能なので、初期工程である設計の段階で、生産工程にいたるまでの予測を立てることも容易になりました。スケジュールを把握しやすくなるため、現場のスタッフにとっても、得られるメリットは決して小さくありません。
CAMはとても便利なソフトですが、導入に際しては、おさえておきたい注意点があります。それは、工作機械と3次元データに互換性をもたせられるように設定しておかなくてはならないということです。複数の企業との取引がある場合には、それぞれの企業に合わせた設定が必要になります。
CAEは、「CADで設計した3次元のデータをベースにして建設工事や土木工事を進めると、どのような仕上がりになるか」ということをシミュレーションするためのソフトです。このソフトを使えば、フロントローディングの際に流動解析を実施しやすくなります。
設計の初期段階であっても、設計の根拠の確定が可能になるので、発生のおそれがある不良内容まで、しっかりと分析できます。よって、設計後期の手戻りを防止しやすくなり、設計効率の向上につながるわけです。
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