以前から人手不足が叫ばれている建設業会の人手不足。これからも、高速道路やマンションなど全国的な建築物やインフラの老朽化などにより、この人手不足が、ますます深刻化していくことが懸念されています。そのような状況の中、2024年には「働き方改革関連法」の適用や「時間外労働の上限」、「割増賃金率の増加」など、遵守しなければならない法令が増えることになっています。これらの法律が施工された場合、建設業界はどのように変わっていくのでしょうか。詳しく解説していきます。
今回の法律施行で一番大きな変化といえば、r年間の猶予期間を迎える「労働時間の上限規制」でしょう。周知の通り、建設業界は労働時間が長いため、若年層を中心にして離職者や求職者の数に大きな影響を与えています。そして、そのことこそ、建設業界の人手不足につながっていると考えられるのです。国土交通省の統計を見ても、その実態は明白です。建設業界の年間労働時間は2036時間(2018年度)に対して、全産業の平均年間労働時間は1697時間(2018年度)となっており、実に300時間以上もの差があるのです。また、休日においても他業界では当たり前となっている週休2日制も、建設業界では実質的に1割以下の労働者しか取れていません。このような状況の中で適用されるのが「労働時間の上限規制」です。内容は他業界ではすでに適用されているもので、以下のようなものです。
■原則、月45時間かつ年360時間
■特別条項でも上回ることのできない上限
引用元:「国土交通省」(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001314888.pdf)
労働時間に続いては賃金の分野です。やはり、賃金問題も建設業の人手不足拍車をかけている要因の一つと考えられます。こちらも他業界では、すでに適用されている法律です。内容は、正社員や非正規雇用労働者といった雇用形態に関係なく、同じ職場で同じ仕事内容に従事している従業員に対して同一の賃金を支払うというという考え方に基づいています。これを建設業界に適用すると、無事故手当、皆勤手当、作業手当、通勤手当、家族手当などのさまざまな手当も正規雇用・非正規雇用の就労形態にかかわらず支給されることになります。
ただ、法律適用後も、現状のままの賃金形態を維持するのかは企業に委ねられている状態で、ガイドライン等もありません。そのため、指針などが必要との声もあります。
最後は時間外割増賃金率引上げです。現在、時間外労働の割増賃金は25%となっていますが、改定後は50%となります。これにより、無理な残業を抑止する効果も期待できるでしょう。ただし、割増賃金となるのは時間外労働のみで、休日労働(35%)と深夜労働(25%)の割増賃金率に変更はありません。
これまで建設業界は長時間労働など過酷な労働条件とのイメージがあり、若年層の求職者が少なかった現状があります。しかし、今回の2024年問題は、そのようなイメージを払拭し、新しい職場環境づくりを目指すきっかけにもなりうるものです。これを機に建設業界の労働環境が改善し、人手不足の解消につながるのではないか、との予測も多方面から聞こえてきているようです。
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