試行錯誤の末に生み出された世界に誇るトンネル技術
2016年に世界最長の座を奪われてしまいましたが、長らく世界最長の交通トンネルだった青函トンネル。このトンネルを掘るために様々な技術が試行錯誤の上で生み出されました。その技術は形を変えて今日まで受け継がれ、世界に誇れるトップクラスのトンネル技術として活躍しています。
今回はそんな二つのトンネルについて紹介します。
海面下約100メートルの地中を通る、全長53.9kmのトンネル
青函トンネルは本州の青森県と北海道をつなぐJR北海道が運営する鉄道トンネルです。海面から約100メートルの地中を通っているトンネルで、その全長は約53.9キロメートル。2016年にスイスのゴッタルドベーストンネルが登場するまでは交通目的のトンネルとして世界一の長さでした。
1961年に着工してから約24年の歳月をかけ、総工費は6,000億円以上と言われています。
複雑に地層が入り組む津軽海峡を安全に掘り進めた先進ボーリング工法
設計当時世界一の長さのトンネルを掘るのは至難の業で、最新の技術が多数生み出されました。先進ボーリングと呼ばれる工法は、地層が複雑に入り組んでいる津軽海峡を安全に掘り進めるために編み出された技術です。
トンネル工事では湧き水や地質の事前把握が重要となります。先進ボーリングはこれから掘る場所を水平ボーリングして採取したサンプルを分析する後方で、あらかじめ有効な掘り方を検討することができるようになりました。
また、海底を掘り進む工事では工事中に噴出する湧き水に苦しめられました。海底では高圧で水が噴出してくるため、工事の進捗と安全に大きく関わってきます。そこで編み出された工法が地盤注入です。
これは、岩盤に穴を開けて特殊なセメント混合物を注入して水の通り道を塞ぐ技術。これにより安全かつ効率的にトンネル内を掘り進めることが可能になったのです。
青函トンネルでは調査用のトンネルを掘ってから本トンネルを掘るという手順で進められましたが、調査トンネルで新しい技術を確立したことにより本トンネルは作業の効率化が進みました。
ヨーロッパとアジアを結ぶ海底トンネル
ボスポラス海峡トンネルはトルコ共和国のイスタンブールとアジアをつなぐ海底鉄道トンネルです。ボスポラス海峡はアジアとヨーロッパを隔てる約30キロメートルにわたる海峡で、1800年代から何度もトンネル建設の計画がありましたが、技術的な理由などで頓挫していました。
工事の難易度を上げた速くて複雑な海流
ボスポラス海峡は秒速約2.5メートルと速く、上下で逆向きの二層流がある複雑な海流によって工事の難易度が高い条件でした。実際の工事では日本の大手ゼネコンが参加し、難易度の高い海峡部分は沈埋工法と呼ばれる技術で進められました。これは海上であらかじめ作ったトンネルを沈め、海底でつなぎ合わせていくという工法です。
沈埋工法による世界最深部での沈設を成功
沈埋工法では水深の浅い場所にトンネルを作ることができるため、トンネルを短くして工期を短縮できるメリットがあります。しかし、水中での接続時に水が浸水しないようにするため高度な施工技術が求められます。そのような重要な箇所で日本の技術が用いられたということが、施工技術の高さを裏付けていますね。
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