土木・建設業界では、たびたび「談合」がニュースになります。不正を疑われないためにも、談合についてはしっかり理解しておきましょう。ここでは、談合とはどのようなことか、何が禁止されているのかについて紹介します。
公共工事の競争入札で、企業同士があらかじめ入札額を話し合い、協定を結ぶ行為のことを談合と言います。
競争入札では、企業同士は競争相手のはずです。談合では、競争相手のフリをしながら裏で話し合いによって「入札する額」「落札する企業」を決めて、企業が不当に利益を得ます。
談合が行われると、正当に競争する場合と比較して、高い価格で落札されることになります。利益と落札確率を考慮して、できるだけ安い価格になるよう落札価格を工夫するのが正当な競争。しかし談合が行われると、落札する企業の利益が大きくなるよう他の企業が入札額を調整するため、結果的に落札価格が吊り上がります。
官公庁の発注は、税金から支払われるものです。不当な税金の使い方になってしまうため、談合は違反となります。
競争入札には、一般競争入札と指名競争入札があります。一般競争入札では、どんな企業が参加するか分からないため、指名競争入札が行われることがほとんどです。指名競争入札の場合、あらかじめ入札に参加する企業が公開されています。参加企業が分かっているから、事前に話し合いの場を設けることができ、談合が発生するのです。
談合を行わないように、受注側に禁止事項が設けられています。入札する企業が守らなければいけない禁止事項は次の4つです。
同業者間で入札額の情報交換をしてはいけません。「A社は〇〇万円で入札するよ」という情報のことです。入札において価格は重要情報のため、しっかりと管理しなければいけません。漏えいすると、談合が疑われることになり、企業として受注の機会を損失する結果となります。
技術情報は、すぐに不正行為というわけではありませんが、入札に関わるような技術情報は談合が疑われる可能性があります。企業の技術情報が簡単に漏れるのも問題です。同業他社との情報交換について、社員の教育を徹底しておきましょう。
同業者同士で受注業者を調整する行為はまさに談合です。受注の順番を決めておき、「今回はA社が受注する」など、調整をしてはいけません。どこかの業者を受注させるということは、他社はその会社より高い額で入札するということ。不当な入札行為のため禁止です。
特定の業者を受注させないように妨害する行為も禁止されています。新規参入業者を妨害するなどの行為です。受注を妨害するために、取引相手に高額な売上割戻金を支払うようなケースもあります。基準内であれば問題ありませんが、水準を超えると独占禁止法違反です。
受注側だけではなく、発注側にも禁止事項があります。ここでは発注側に課されている禁止事項を見ていきましょう。
発注側が談合を指導してはいけません。たとえば、事業者ごとに年間受注目標額を指定して、業者間で調整してくださいと指導するようなことです。昔からの付き合いなどで優遇したい意図で談合指導をしてしまった事例もあります。談合を呼びかける指示は禁止です。
入札結果が出る前に受注業者を指名してはいけません。「A社にお願いするつもりだ」と言うことも禁止事項です。競争入札は、入札額がすべてなので、結果が出るまでどこに依頼するかは分かりません。事前に業者を特定すると不正を疑われます。また、軽い気持ちで「今回もよろしく」などと言ってしまうと、業者の指名と疑われかねませんので気をつけましょう。
入札談合が可能になる情報を漏えいするのも違反です。公式サイトに記載している情報は該当しません。公開されていない秘密の情報を漏えいすることが禁止されています。業者から金額を提示されて予定価格より高額か低額かを教えることも秘密情報漏えいです。
特定の業者が落札できるよう条件を設定すると特定業者のほう助となり違反行為です。特定業者をほう助するだけでなく、特定業者を排除することも当然禁止。入札談合をしやすくなるような手助けもしてはいけません。
2003年に施行された入札談合等関与行為防止法で、公務員が入札談合に関与した場合は公正取引委員会が改善を求めることができると定められました。また、2005年には独占禁止法が改正。公正取引委員会が家宅捜査・書類の差し押さえができるようになり、地方検察庁が捜査を行えるようになりました。
企業の罰則としては課徴金があります。談合の申告を促すために設けられたのが「課徴金減免制度」です。談合に加わった企業が自主的に申告すれば課徴金を免除されるというもの。公正取引委員会の立ち入り調査前に申告した最初の企業は免除、2番目に申告した企業は半分に減額されます。この制度で申告が増え、不正行為が明るみに出やすくなりました。
リニア中央新幹線の建設工事において、大成建設、鹿島、大林組、清水建設の4社が独占禁止法違反により排除措置命令を受けました。2015年2月頃までに談合に合意し、大林組と清水建設が受注。しかし、この両社は課徴金減免制度に基づき、違反申告をしました。課徴金は、大林組が31億1839万円、清水建設が12億331万円でしたが、減免されています。
受注しなかった大成建設、鹿島が談合の事実を認めていません。しかし2021年3月1日、東京地裁はどちらも有罪判決を下しています。
最近では、沖縄県竹富町で官製談合事件がありました。非公開の最低制限価格を事前に漏らしたということで前町長が逮捕されています。また、南富良野町でも入札情報を業者側に漏らし、見返りに現金200万円を受け取ったとして前町長が逮捕されました。
談合は、納税者である国民の信用を失います。受注できたとしても、企業としていいことはありません。気の緩みが談合につながってしまうこともあります。土木施工管理技士として、談合について正しい知識を身につけ、責任感を持って業務に取り組むことが大切です。
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