土木建設業界は何年も前から人手不足が叫ばれています。中でも、公共の大規模プロジェクトなどを手掛ける大手のゼネコンで人手が足りず「ゼネコン離れ」という言葉が生まれるほど。現場作業員、現場管理技術者のどちらも人員不足が進んでいる状況です。
日本の産業全体の就業人数はほぼ変わっていないのに対して、建設業で働く人は90年代には700万人近くいましたが、2015年には約500万人まで減少しています。
おまけに、50代以上の就業人口は変わらず、20~30代の若者世代が減少しているという意見も。若い人がどんどん辞めてしまう事で、キツイブラックな業界というイメージがついてしまい、若い人が入ってこないという悪循環を生んでいる状況です。
ゼネコンに限らず土木建設業界全体にいえることですが、人が離れてしまう原因は「長時間労働」と「待遇の悪さ」といわれています。
長時間労働については、日本の全産業の年間総労働時間が1741時間、建設業は2078時間というデータがあります。自由な働き方と自分の時間を求める現代の若者にとって、無視できる数字ではないでしょう。
現在日本の企業では週休二日制を採用しているところが多いですが、建設業で採用しているところは多くありません。大手のゼネコンでも週休二日を達成しているところはほんの一部で、大手、中規模に関わらずほとんどの企業は週休1日制です。また、高度経済成長期の気質が根強く残っているため、長い残業が常態化しているのも長時間労働の原因の一つです。
待遇面の原因としては、現場作業員の日給月給制が挙げられます。悪天候による現場休みがあると月給が減ってしまうなど、安定した給料をもらうのが難しいためです。キャリアアップに繋がる資格制度などが整っておらず、先の見えない長い下積み期間を経ないと稼げるようにならない仕組みも若者にとっては魅力的ではありません。
こうした労働環境の悪さが、若者を中心とするゼネコン離れを加速させています。
人で不足が進むと、企業の維持はおろか業界全体の維持も難しくなってしまいます。離職を抑え、若者が入ってくるような取り組みも行われています。
工事内容に対して適切な工期を設定する取り組みはその一つ。悪天候やトラブルも見越した余裕のある工期を組めば、遅れを取り戻すための休日出勤や残業を防止できるでしょう。週休二日制の推進、残業の減少を目指して、公共事業などを中心に取り組みが進んでいます。
給与などの待遇面を改善するための施策も進められています。例えば現場作業員の技術を可視化し、一定の給与水準を設ける仕組みです。基準があれば、不当に安い賃金の発生を防ぎやすくなるでしょう。
現在の土木建設業界は、長年の慣習が残っている部分も多く、変化には時間がかかるかもしれません。しかし、若者のゼネコン離れをきっかけとして問題が可視化され、いい方向に進みだした段階といえそうです。
少しずつですが改善は進んでいくはずです。今後の動きに期待しましょう。
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