CO2などの温室効果ガスの排出量と、それが吸収される量が均衡している状態のことを、カーボンニュートラルといいます。たとえば、経済活動によって排出される温室効果ガスの分量から、森林によって吸収される分量を引けば、排出量は実質上プラスマイナスゼロになるわけです。
政府は「カーボンニュートラル宣言」を2050年までに達成することを目標として打ち出しています。菅元首相が、この宣言を所信表明に含めていたのは2020年10月のことです。目標をクリアするためには、現状抱えている多くの課題を解決していく必要があります。
参考URL:「2050年カーボンニュートラル宣言」-aidiot
国内の産業部門において、CO2の排出量は建設機械によるものが約571万トンとなっています。これは、決して少なくない量です。工事現場でのエネルギーの燃焼により発生するCO2を加えると、排出量はさらに大きなものになってしまいます。
また、カーボンニュートラルと深い関係がある建設業界に対して「建築物省エネ法」が制定されていることも、おさえたおきたい知識です。建築物のエネルギー消費性能の向上に関する基本的方針などが定められています。建物にかかるエネルギーをより合理的に使用することが、この法律のねらいとなっています。
建設業界では、再生可能エネルギー、いわゆる「再エネ」の導入および活用が始まっています。これは、環境省の「Science Based Targets(SBT)」によって認定されている温室効果ガス削減目標をクリアするための取り組みです。つまり、化石由来のエネルギー使用量をおさえ、再エネをより多く利用する方向へと舵がきられているのです。
政府は、2030年度までに電源構成比率における温室効果ガスの活用を36〜38%とすることを目標値として設定しています。
参考URL:アスエネメディア
「カーボンニュートラル対応試行工事」とは、脱炭素社会を現実のものとするための取り組みのひとつです。これは、工事におけるカーボンニュートラルを意識した取り組み実績や推進提案などを評価するためのもので、カーボンニュートラルへの積極姿勢をアピールするための材料にもなります。
建設現場で使う原材料を扱う際にも、温室効果ガスの発生をできるだけおさえるよう努めることが大切です。資材の調達から設計・施工・運用・解体にいたるまでの全プロセスにおけるカーボンニュートラル化の実現が求められます。具体的には、グリーン調達品目を活用したり照明をLED化したりすることなどの取り組みがあげられます。
環境ビジョン「Green Challenge 2030」を掲げ、カーボンニュートラルにつながる環境活動を実施しています。たとえば、施工段階でのCO2排出量については、「原単位を1990年比で5割削減」を目指し、再エネ推進事業についても、関連事業の試算で発電能力を650MW以上にすることを目標として設定しているのです。
参考URL:「環境方針 "Green Challenge 2030」-三井住友建設
脱炭素で2050年までにカーボンニュートラルな社会を実現するために、温室効果ガスの排出量を削減する取り組みに加え、ZEB・省エネ建物の建設や高度なエネルギーマネジメントの提供などを推進しています。また、浮体式洋上風力発電所をはじめとする再エネ発電施設の建設にも力を入れていく方針です。
参考URL:「脱炭素社会の実現」-戸田建設
ICT施工を積極的に導入していくことで、エネルギーの生産性向上を目指しています。また、建設現場で発生するCO2の大部分が、重機を動かすために使用する軽油燃料によるものであることをふまえ、クローラクレーンなどの大型重機には、環境負荷の小さい燃料を活用する取り組みもおこなっています。ミドリムシ由来の「次世代バイオディーゼル燃料」や、天然ガス由来のGTLなどの燃料です。
参考URL:「施工時CO2削減の取り組み」-戸田建設
温室効果ガスの排出量を、2030年度に30%、そして2050年度には100%削減することを目標にしています。さらに、サプライチェーンによる温室効果ガス排出量についても、2030年度までに30%削減する方針です。また、施工時の省エネや廃棄物発生の抑制、資材の有効利用のほか、さまざまな働きかけをサプライチェーンに対しておこなっています。
参考URL:「エコ・ファーストの約束」-東急建設
全現場におけるすべての工程で、CO2の排出量を月ごとに可視化できるようにするための環境データ評価システムを開発。2019年6月からこのシステムを本格的に運用しています。現場ごとのデータを分析・比較することで、より効果的にCO2排出量を減らしていく対策を打ち出し、脱炭素社会の実現を目指していきます。
参考URL:「施工段階(現場)からのCO2排出削減」-鹿島建設
建設業界において、カーボンニュートラルについての理解や取り組みが大切であることを紹介してきました。また、企業や建設現場単位で実施されている取り組みを知ってことも、土木施工管理技士として活躍していきたいと考えている方にとって、とても重要なことです。
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