こちらでは、砂防工事について解説しています。砂防工事の意味や特徴、工事でしばしば採用される工法などをまとめました。また、砂防工事の種類についても紹介しています。土石流対策やがけ崩れ対策、地すべり対策など、地域を守るために実施されるものに加え、景観を維持ためにおこなわれる山林保護についても、あわせて説明しています。砂防工事への理解を深めるために、ぜひ参考にしてみてください。
「砂防」とは、災害を引き起こす可能性がある土砂の流下を防止したり、あるいは調整したりすることを意味します。ちなみに、ここでいう災害とは、土石流や、がけ崩れなどのことです。地域に暮らす人々に被害を及ぼす場合もある災害を事前に防ぐのが、砂防工事のねらいです。
たとえば、群馬県は、大部分が利根川水系の流域にあるため、自然豊かな土地として知られています。けれどもその反面、北部が火山岩からなっており、かつ、南部は変成岩からなっているため、侵食崩壊に遭いやすいという危険性をはらんでいます。そのため、昔から砂防工事がおこなわれてきました。
こちらでは、土石流対策・がけ崩れ対策・地すべり対策・山林保護の4つについて紹介していきます。
土石流が発生すると、辺りのものをすべて飲み込んでしまうほどの威力をふるいます。とても危険な災害であるため、慎重な対策を講じる必要があります。土石流が発生する原因は、地震が発生したり雨がたくさん降ったりすると、山腹の土砂が不安定な状態になってしまうことです。堆積している土砂が不安定化し、いっぺんに押し流される現象が、いわゆる土石流です。
土石流が再発するのを回避するための対策は、荒廃した山腹を安定化させることです。そのためには、壁や柵を設置して土留めをする必要があります。さらに草木を植えてさらなる安定化をはかることも求められます。
がけ崩れが発生したときに人命や財産を守れるようにするには、がけ崩れ対策を施しておくことが重要です。危険な斜面をおさえるための擁壁工・法枠工や、崩れ落ちてきた土砂を受け止めるための落石防止工などの方法があります。
人々の住まいや公共の施設などに被害を及ぼす可能性があると考えらえる部分に施す、地すべり対策です。地すべり発生の原因になりかねない土のかたまりや地下水を取り除いたり抜き取ったりする工事です。土のかたまりを除去するには、排土工という工法が採用されます。また、地下水を抜き取る際には、集水井を設置する工法で地すべり対策を実施します。
土石流などが発生した後の山林は、草木のない、荒廃した斜面のみが残された状態になります。緑のない斜面は殺風景であるだけでなく、土石流の再発生につながるリスクもはらんでいます。そこで必要になってくるのが山林保護です。草木を植えていくことで、景観の向上だけでなく、斜面の安定化にもつなげやすくなるのです。山林保護も、大切な砂防工事の一環として実施される必要があります。
集水井戸(縦に掘る)・集水ボーリング(集水井戸や排水トンネルから放射状に掘削した小さい孔)・排水トンネル(大きい孔)を掘削していく工法です。地すべりの原因になるおそれのある土塊にある地下水位を低くするのがねらいです。土塊にある水を、集水井と集水ボーリングと排水トンネルで排水していくようにします。
土塊の頭部の荷重を取り除き、地すべりにおける滑動力をおさえることをねらいとした工法です。ただし、排土により上部の地すべりを誘発してしまうおそれがあるので、事前の調査が非常に重要です。
地すべり末端部の盛土で、地すべりの滑動力への抵抗力をアップさせる工法です。ただし、盛土の下方部分への地すべりのリスクを高める可能性もあるため、こちらも事前の慎重な調査が欠かせません。
不動地盤まで杭を挿入することで、地すべりの滑動力を抑え込む工法です。この杭工においては、鋼管杭が使用されるのが一般的です。近年では直径1000mmを超える大口径のものも使用されるようになっています。
砂防工事は、地域に暮らす人々を災害から守るための土木工事です。社会にとって欠かせない、大切な役割ともつ砂防工事に、土木施工管理技士として関わっていくことには、大きな意義がありますし、また、大きなやりがいも感じられるでしょう。
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