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ダム・河川

大規模事業は最新技術が多数投入

八ッ場ダム

水害の多い日本ならではの国家プロジェクト

ダムや河川などの土木建設は大規模なものになることが多く、国家レベルのプロジェクトのため最新技術が惜しみなく投入されます。ここで生まれた工事技術が一般の現場にフィードバックされることも多いです。ここでは、国内のダムと河川事業から一つずつピックアップして紹介します。

八ッ場ダム

八ッ場ダム

3Dスキャナやドローン等の新技術を採用、2020年に完成予定

八ッ場(やんば)ダムは群馬県吾妻郡長野原町に流れる利根川の源流の一つ、吾妻川に建設中の多目的ダムです。堤防の高さ116メートル、長さ290.8メートルの重力コンクリートダムです。

1947年に日本を襲ったカスリーン台風で利根川が氾濫し、大きな被害を被ったことから、当時の建設省によって1952年に計画されました。しかし、支流の川から流入する強酸性の水質によって当時の土木建設技術では建設が進まず計画が凍結されました。その後も住民の反対運動などを経て2015年から工事がスタート、2020年の完成を予定しています。

八ッ場ダム

現場では3Dスキャナやドローン等の新技術が積極的に使われています。ドローンで撮影した3D画像から高度な情報を得て管理に活かすなど、新しい試みが多数投入されています。

また、約100万平方メートルものコンクリートを打設するため、掛かる時間も短くありません。そこで、国内で使用されるのは5現場目の巡航RCD工法という新技術が使われます。これは内部コンクリートを先に施工し、後から外部コンクリートを施工することで作業を効率化する工法。このような取り組みで大量のコンクリートを素早く施工しています。

このように、最新技術を駆使することで現場をスムーズかつ安全に進める取り組みが行われています。

首都圏外郭放水路

首都圏外郭放水路

洪水被害から首都圏を守る

首都圏外郭放水路は増水時などに活躍する調整池の一種で、埼玉県春日部市周辺の地下にあります。総延長約6.3キロメートルで、地下約50メートルに作られていて、世界最大の地下放水路となっています。
東京湾まで流れる中川と綾瀬川が大雨や台風で氾濫するのを防ぐ目的で、1993年から2006年に建設されました。完成後は利根川系河川の氾濫、洪水被害が減少しています。

首都圏外郭放水路

内部のトンネルは最大で10.9メートルという大口径になっていて、長さは1920メートルにも及びます。この巨大なトンネルを掘り進めるために「泥水加圧式シールド工法」が採用されました。これはドリルの切り羽に泥水をためて加圧しながらトンネルを掘り進める技術です。トンネルは急に曲がっている部分もあるため、本体が折れ曲がる中折れ型となっています。

掘り進めた背後ではすぐにセグメントを組み立ててトンネルを構築、水が出たときや地震にも耐える設計がされています。セグメントの運搬と組み立ては全自動化されて、現場作業の効率化が図られています。

また、掘り出した土砂は江戸川の堤防の盛り土工事に転用するなど、産業廃棄物扱いの物を再利用する試みなども行われています。こうしたエコロジーへの取り組みは、今後さまざまな現場で活かすことができそうですね。

ダムの役割とは

ここからはダムを建設する意義について見ていきます。

日本は台風や雨などの水害にまつわる被害が多いこともあり、世界的に見てもダムの数が非常に多い国です。そのため土木業界に携わるのであれば、ダムの建設事業に携わる機会があるかもしれません。土木施工管理技士をめざすのであれば、ダムに関する基礎知識も身に付けて説くと良いでしょう。

ダム事業には多額の費用がかかります。それでもダムが建設されるのは、日本とても雨が多く、水害が起こりやすい国だからです。

梅雨時はもちろん、台風などの時期になれば、降水量が劇的に増え、河川の水が一気に溢れて周辺へ流れてしまい、被害を及ぼす可能性があります。ダムにはそうした大量の水が河川に流れ込まないように、水量を調整し、地域の財産や人命を守るという重要な役目があるのです。

また、渇水の時期にも対応できます。降水量が少ない時期でも、生活用水や農業用水を確保して、安定的に水を供給することができるようになるのです。

ダムと堰堤の違いは?

ダムと似た建造物に、「堰堤」があります。堰堤とは、河川の水を堰き止めるために建設されます。その用途もダムと似ているように思われますが、それぞれに役割があり、適用される法律なども違います。

役割上の違い

堰堤も河川の水を堰き止めるために建設されます。この点はダムと同様です。しかし堰堤は、ダムと比較するとその規模が小さいため貯水機能がなく、堤防機能がありません。これは、堰堤の主な目的が「土砂災害を防ぐ」ことにあるためです。特に山間部では「砂防堰堤」が建設されることもあります。

一方、ダムは膨大な貯水量を備えて建設されます。大量の貯水機能を活かした水力発電まで可能です。貯水機能が求められていない堰堤とは、こうした点でも異なります。

高さの違い

ダムと堰堤には、高さの違いもあります。ダムは高さが15メートル以上の構造物であり、それ以下であれば堰堤となります。特にこの違いが明確にされたのは、1964年に制定された新河川法の後。そのため1964年より以前に建設されたダムは「〇〇堰堤」と呼ばれている場合があります。

法律上の違い

ダムが属する法律は「河川法」ですが、堰堤は「防砂法」に基づいて計画され、運用されます。これは役割の違い(貯水機能・堤防昨日)があるため、適用される法律が異なるため。操作方法や点検、設備基準なども異なるという点も、土木施工管理技士として、ぜひ知っておきたいポイントです。

ダムができるまで

続いてダムができるまでの一連の流れを見ていきます。

現地調査〜一次転流

ダム建設が始まる前に予備調査が行われます。治水計画、実地調査、地元に住む人々への説明、ダムの設計などまでが行われ、ダム建設を進めても良いかひとつずつ確認していきます。

現地調査が行われ必要な評価等が完了すれば、まずは工事用の道路が建設されます。自然のなかに建設されることもありますが、ダムほどの大規模な土木工事になれば、必要な建材などを運搬するため道路が造られるのです。

またダム建設では、工事現場に水が流れている状態だと掘削工事ができないため、仮排水路をつくり、川の流れを一時的に変えることも必要です。この、最初に川の流れを変えていく作業は「一次転流」と呼ばれています。

掘削~二次転流

ダムを支える構造体を建設するために、次は基礎地盤を掘削する工事が始まります。建設される土台となる地面をはじめ、山肌や地盤を柔らかくしている土砂などを、掘削することによって除去していきます。掘削工事後には、研磨装置によって磨いていき、最終的には手作業も交えて岩盤を仕上げていきます。

基礎工事が完了すれば、次に「二次転流」の工程にはいります。これは、一時流転によって変えられていた川の流れを元に戻し、ダムの内部に水を流してゆく作業のことで、これによってダムの本体に水が流れることになるため、ダムが運用できる状態になります。

コンクリート打設~完成

しかし、まだダムの本体となる「堤体」ができていません。そのため、コンクリート打設という工程によって、コンクリートの製造を行い、ダムの本体をつくっていきます。コンクリート打設には、「RCD工法」をはじめ、様々な工法があります。

堤体ができれば、工事用に設置された施設の撤退がはじまります。仮排水路も同時に閉塞され、いよいよダム内部に水を流して本格的な運用を行う準備がされていきます。試験的に貯水や放流が実施され、その後一年ほどかけてダムの安全性が検証されれば、ダムは完成になります。

ここまでダム建設の流れを見てきましたが、ダムは計画から調査段階を経て、実際に運用されるようになるまで、10年から20年ほどの年月が必要な、非常に大規模な工事です。土木施工管理技士としてダム建設に携わることになっても、自分だけの担当では終わらないかもしれません。それでもダム建設の流れや意義を知っておくことは、欠かせないのです。

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