作業員に指示を出す司令塔、現場全体の出来を左右する業務
現場監督は現場全体を取り仕切るポジションで、サッカーや野球などの監督と同じで全体を見て指示を出しまとめるために必要な業務です。
土木工事は公共事業なども含めた大規模な工事となることが多く、現場に入る作業員の数も多いため指揮をとる現場監督が必要です。現場を見回って作業員に指示を出したり、危険な作業や場所を改善したりと業務内容は多岐にわたります。
作業員は年上で経験が長い方も多いので、仕事を始めた最初のうちは認めてもらえないことも少なくありません。しかし、仕事を覚えて的確な監督業務がこなせるようになって認めてもらえた時は大きな達成感があります。
また、工事着工前の周辺住民への説明会、騒音や振動、クレームなどの現場対応も大切な業務の一つ。時には周辺住民の方から厳しい言葉をもらうこともあるかもしれません。しかし、地域の理解と協力なしには工事は進みませんので大切な仕事です。やり遂げればやはり大きな達成感を得ることができるでしょう。
土木工事の現場でよく発生するクレームの例と、その対応方法を一つずつ見ていきましょう。実際の業務に当たるときの参考にしてください。
重機が通る際の振動や切削機械の騒音などは現場で最も多いクレームです。音と振動が出る作業を行う際は早朝を避けるなど、工程での工夫も必要となるでしょう。どうしても朝や夜に騒音が出てしまう場合は住民説明でしっかりと事前周知しておく必要があります。特に騒音が出る作業がある場合は防音シートを設置するなど、事前の対策も大切です。
毎日工事現場にいると気にならなくなってしまいますが、工事現場ではかなりの粉塵が発生します。乾燥する季節や風が強い日などは土埃が舞って付近の洗濯物を汚してしまう事も。現場出入口の道路に散水するなど、こまめに粉塵対策をおこないましょう。
現場作業員の周辺地域での立ち振る舞いもクレームの原因となることがあります。タバコやゴミの管理はもちろんですが、付近のコンビニや自動販売機を利用する際も気を配りましょう。きちんと作業服を着こなすなど、一般常識で見て不快な服装をしないように管理するのも大切です。
優秀な現場監督は、現場作業員と良好な関係を築いてスムーズな工事を行うのが上手です。しかし、作業員の要望を何でも聞いて友達のように仲良くなればいいというわけではありません。
作業員に求められる監督を目指すなら、効率よくスムーズな段取りを心がけましょう。聞かれたことにすぐ答える、というのも大切です。聞いたことがいつまでたっても返ってこないと作業はストップしてしまいます。結果的に作業が遅れてしまい、作業員の労働時間にも影響が出かねません。
指示の出し方にも一工夫必要です。あいまいな指示を出されると作業員は困ってしまいます。数字や条件をはっきりさせて「2日後までに10cm伸ばしておいてください」と具体的な指示を出すと作業の段取りなどが組みやすくなります。
工事の段取り、寸法などを常に把握して的確な指示を出し、質問に答えられるようにしておきましょう。
建設現場でみずから指揮に立ち、多岐にわたる業務を責任を持って行う現場監督の仕事は、確かに簡単なものではありません。しかし、土木建設工事には、現場監督だからこそ味わうことができる大きなやりがいもあります。
建設業のやりがいとしてよく言われる「地図に残る仕事」ですが、土木建設の現場監督はとりわけ、このような規模の大きい仕事に関わることになります。道路はもちろん、橋、河川、ダムといった巨大な土木建設工事は、それまでの街並みや景色を大きく変えるものですから、それこそ「自分自身の手で街をつくってゆく」ようなスケールの大きい仕事です。これほど大きな仕事は、他になかなか類を見ないといってもよいでしょう。
自らが現場監督として最初から最後まで手掛けた事業が完成し、紙の図面からどんどん建設物が目の前に立つこと。たくさんの人によって利用され、これから先もずっと社会に欠かせないものとして使われ続ける。そんなスケールの大きな仕事に先頭に立って携わることができるのは、土木の現場監督の特権とさえ言えます。地図に残る仕事とは、そんなやりがいと意義に満ちた仕事のことを指す言葉なのです。
土木建設業は、道路、トンネル、橋、河川、ダム、宅地の造成といったスケールの大きな工事がほとんどです。そのため、施主となるのが国や地方行政といった公的機関である、公共事業の受注となることが多いのです。こういった発注事情のために、土木業は仕事がなくなりにくいとされています。実際に、現場監督として担当する工事現場も、ひとつが終わればまた次の現場と、現場が絶えることがありません。そのため、次から次へと様々な条件の工事現場を経験することができ、自身の現場監督としての成長にもつながります。
また、経験できるのは現場だけではありません。スケールの大きな工事ともなれば、普通の建築工事などでは使われることがない、最新の工法などにも触れることができるチャンスも多いのです。普段の工事では触れることができない工法を経験することで、現場監督としてのスキルアップや転職にも役立つことでしょう。
土木業の現場監督の年収相場は、就職する企業や担当する工事事業、また現場監督の年齢によって差がありますが、土木業の現場監督の収入の特徴としては、おおよそ次のようなことがあげられます。ひとつは、40代までに年収が1,000万円ほどに達する現場監督もいること。また、他の職種とは異なり、50代以降でも年収がさらにアップすることです。
もちろん、先に述べたように、同じ現場監督といえども、年収の相場に幅があることは事実です。平成30年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、現場監督が含まれる建設業の賃金の平均は月給ベースで約33万円となっており、これにボーナスなどが加算されると、現場監督の年収相場はおよそ460万円ほどになります。もちろん、建設業に携わる労働者の平均年齢はおよそ43歳ですから、他の業種よりも収入は良い方と言えるでしょう。
同じ調査で企業の規模別に比べれば、やはり大企業に務める現場監督であるほど、年収も高いことがわかります。従業員が100人未満の建設企業で働く現場監督の年収相場は、およそ435万円ですが、1,000人未満の企業になれば、現場監督の年収相場はおよそ540万円です。従業員数が1,000人以上の巨大企業ともなれば、そこで働く現場監督の年収相場はおよそ665万円にもなります。このように就職している企業の規模によっても、現場監督の年収は大きく異なります。
土木業では、建設現場と監督するポジションとして、現場監督のほかに、施工管理技士という職業名が使われることがあります。現場監督と施工管理技士に立場、業務内容として明確な線引きはないとされています。実際に、建設工事の管理・監督を求人する場合でも、現場監督と施工管理技士はまとめて記載されていることもあり、仕事内容そのものに大差はない状態です。
ただし、実際の業務の現場では、現場監督の方がより現場に出て監督業務を行うポジションとして扱われている場合もあります。現場監督は、現場の進捗管理をはじめ、下請け業社を手配したり、施工図を確認したり、また作業員の安全管理や工事の品質管理、またクレームの対応などを行います。一方で施工管理技士は、同じ土木業でも、原価管理や現場環境の調整といったデスクワーク関連を引き受けることが多いようです。
続いて現場監督と現場管理人の違いについても解説していきます。一般に現場代理人と呼ばれる役職は、現場監督と同じく、建設業務の様々な事項を処理する仕事です。しかし、「建設業法」において現場に設置しなければならない義務もなければ、必要な資格もありません。この点で、国家資格である「土木施工管理技士」の資格を求められる現場監督とは異なります。
一般に現場代理人は、発注者と受注者の間で設置するかどうかが決められるものです。
工事現場の花形役者である現場監督。「監督さん」は現場で頼れる大きな存在です。それだけに仕事は多岐に渡り、知識と経験から裏付けされた確かな信頼と実力が求められます。
一人前になるまでには相応の経験が必要ですので諸先輩のもとでOJTにより実力を身につけていくやり方や、小さな現場を持たせてもらい、悪戦苦闘しながらも現場を完成させるなど、経験していく過程もさまざまです。
現場監督はものづくりを五感で感じ、自らの采配で現場が動いていく臨場感、そして充実感と達成感をも味わえるやりがいに満ちた仕事です。
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