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橋梁

橋梁工事とは

橋梁工事とは、簡単に言うと橋を作る工事のこと。歴史は古く、古来から川や谷などの隔てられた場所で、人々が道を行き交うために建築されてきました。海や川など下にある空間を閉ざさずに、交通を支えるための構造物を作る工事を「橋梁工事」と呼んでいます。

橋梁は、一般的には橋と呼ばれますが、桁橋や吊り橋、ラーメン橋など様々な種類ががあります。なかでも、幹線道路の高架は街中でもよく見かけるものでしょう。橋梁は大きく分けると、地中で支える基礎を作る「下部工」と高架本体を作る「上部工」に分けられます。

橋梁工事の「下部工」では、杭を地中に打ち込んで基礎杭工橋を支え、さらに梁を設置して矢板を支えていきます。その後、コンクリートを流し込んで橋脚を構築。コンクリートが硬化した後に橋桁を築きます。

「上部工」には、橋脚に橋桁を載せ、道路工事までが含まれています。下部工と上部工、この二つが合わさって橋梁工事が行われていくのです。

橋梁工事には複数の工法があり、それぞれ特徴が異なります。ここでは代表的ないくつかの工法を紹介していきます。

トラッククレーンベント工法

トラッククレーンベント工法は橋梁工事で最も一般的な工法です。上部工をベントで支え、移動式クレーンで橋を架設します。費用が安く、工期を短縮できるのが大きな特徴です。

直吊りケーブルエレクション工法

ベントの設置が困難な場所で用いられる、橋の両岸に鉄塔やアンカーを設置していく工法です。鉄塔の設備やアンカーブロックの強度・形状を計算する必要があり、高い技術が必要となります。実際の作業では、架設用の吊り設備を組み立てた後、鉄塔からケーブルを張り、その後、ハンバーロープで橋を吊り下げて架設していきます。

斜め吊りケーブルエレクション工法

直吊りケーブルエレクション工法同様に、ベントの設置が困難な場所で用いられる工法です。吊り設備を組み立てたあと、ケーブルを斜めに張る点が「直吊りケーブルエレクション工法」との違いです。

送り出し工法

橋梁下にベントが設置できない現場で採用される工法です。桁の先端部から自走台車を使い、桁を送り出して橋を架設します。架設機材や地組ヤードの確保が必要で、架設時の強度計算や補強が必要になります。

フローティングクレーン工法

フローティングクローラクレーンで橋体を一括して架設する工法です。工場岸壁や現場付近で組み立てた部材を現場に運搬し、完成に近いものを運んで架設する工法なので、工期が短い点が大きな特徴です。

トラベラークレーンベント工法

流水部や橋梁下など、トラッククレーンが設置できない現場で用いられる工法です。トラベラークレーンの走行軌条設備を設置し、台車を使って部材を運搬。その後、トラベラークレーンで架設する工法です。

橋梁工事の必要性

橋梁工事は、特に交通利便性が悪い地域で、多くの人・モノの移動における悩みを解決します。また、街と街の懸け橋としての役割も担っており、地域の発展のためにも橋は欠かせない存在となっているのです。

橋はただその景観の美しさや壮大さだけではなく、私たちの生活に密接に関わるインフラとして必要不可欠なものなのです。

安全性の確保

橋梁工事は、高い場所に建造物を設置する工事なだけに、より高い安全性が求められます。工事そのものに危険が伴うため、安全を確保するためには高い技術が必要になります。橋梁工事を行ううえで、押さえておきたい安全対策について紹介していきます。

安全な工事環境の徹底

安全な工事を遂行するためには、安全な環境を整えることが何よりも大切です。そのためには現場の管理体制が重要。架設をするときは、知識と経験がある技術者が担当し作業の方法を指揮します。作業間の連絡の徹底・調整を行う現場監督の存在は安全な工事環境を保つために必要不可欠と言えるでしょう。

また、マニュアルや安全基準の作成のほか、全体への周知や現場での安全対策も徹底して行う必要があります。適宜、安全パトロールを実施することも、作業員一人ひとりの意識を高めるために効果的な方法だと言えます。

橋梁架設工事においては、作業方法の確認、部材の落下防止対策、作業者の墜落防止設備の設置などを計画・実施する必要があります。計画に基づいて作業を行い、安全が確保できているか監視することも現場監督の大切な役割です。

作業環境が悪いときには、現場での作業を中断する決断力も必要になります。大雨や台風、大雪などの悪天候下では危険性も増すため、対策を施すか、作業を中断して安全を確保することが求められます。

橋桁降下作業での安全対策

橋桁降下作業では、その準備と作業において徹底された安全対策が必要になります。橋桁を支えるためのジャッキが変形しないように、接触する位置を橋桁のウェブか、リブのある箇所に定めます。その他にも、部材の配置や組み合わせで強度が確保できるように計算することも必要になります。

橋桁の架設作業を行うときは、平行した橋桁を連結し、控えワイヤーロープを設置して落下防止を行います。このときに気を付けるのは、重心の偏りに注意しながら作業を行うこと。複数の降下設備を使うときは、降下量を小さくして、大きな変化を与えないようにすることも安全確保の手段の一つです。
橋梁工事では、安全対策が特に徹底して講じられており、複数の対策を行うことによって安全性が確保されています。特に危険が伴う工事のため、小さな安全対策であっても軽視はできません。

橋梁工事に必要な資格

橋梁工事に携わりたいのなら、土木施工管理技士の資格取得がおすすめです。資格の取得には、実務経験・資格試験の両方の合格が必要です。2級と1級に分かれており、1級は監理技術者、2級は主任技術者になれます。また、取得している級によって、対応できる工事の範囲が異なるため、確認しておきましょう。

1級と2級の両方で、必要となる実務経験の年数が異なります。1級は、中・高等学校や専門学校を卒業していれば、指定学科卒業後10年以上、指定学科卒業後以外であれば11年6カ月以上の実務経験が必要になります。2級の場合は、中・高等学校、専門学校の指定学科卒業後3年以上、指定学科以外の卒業後では4年6カ月以上の経験が必要です。

試験は学科試験と実地試験に分けられており、学科試験はマークシート式となっています。幅広い出題範囲のため、暗記に頼るのではなく、理解しておくことが重要でしょう。

実地試験は記述式で、これまでの実務経験をもとに回答を記述する試験内容となっています。相手に伝わりやすい文章を作成する力が求められるため、普段から自分の仕事を言語化する訓練をしておくと良いでしょう。

学科試験の合格率が60%に対して、実地試験は30%。1級と2級の実地試験は比較的難易度が高いため、学科に合格して一安心するのではなく、実地試験の対策にも力を入れる必要があります。文章の表現力も求められる実地試験では、実際の現場で従事してきた経験を分かりやすく、そして正しく伝えることが重要です。

日本が世界に誇る橋梁建設の技術

観光スポットとしてもおなじみの、瀬戸大橋、明石海峡大橋の二つ。意外と知られていない高度な橋梁建設技術が駆使されています。それぞれの橋を詳しく紐解きながら、日本が世界に誇る橋梁技術について触れていきましょう。

明石海峡大橋

明石海峡大橋

吊り橋として世界一の長さを誇る

明石海峡大橋は1998年に開通した兵庫県神戸市と淡路氏を結ぶ世界最長(2019年6月現在)のつり橋です。全長3,911メートルで、中間を支える塔と当の間は1,991メートル、こちらも世界一の長さです。約10年の歳月をかけて建設されました。
橋を支える主塔の高さは297メートルで、日本で一番高い高層ビルである横浜ランドマークタワーより1メートル高くなっています。

明石海峡大橋

これだけの建造物を流れの速い明石海峡に作るのも簡単ではありません。いくつかのブロックに分けて運び込まれた主塔の各パーツは当時最新鋭の橋梁技術を駆使して、誤差0.04ミリメートルという精度で組み上げられました。
ケーブル架設にはヘリコプターを使い、橋桁の架設には大型のクレーンを使用するなど、大規模な工事が行われましたが、これだけの精度で組み上げられたのは驚くべきことです。

阪神・淡路大震災が発生した1995年は明石海峡大橋の建設真っ最中の事でした。震源地から近かった大橋は震度7という大きな揺れに襲われましたが、倒壊することはありませんでした。
二つの主塔は合計で1メートル近く地盤事移動し結果的に当初の設計より全長が1メートル延びる事態に。しかし、地震後の調査では構造に損傷がないことが分かりました。高い精度での組み上げをはじめ、数々の地震対策が功を奏しました。

地震による揺れを受けると、主塔自体が動いて揺れを吸収します。さらに主塔の中には1つ10トンの重さの油圧式制振装置が20個設置されていて、地震の揺れを制して倒壊を防ぎます。これらの耐震構造と、震度7の揺れに耐えた実績は海外でも紹介されており、日本の橋梁技術を世界に知らしめることになりました。

瀬戸大橋

瀬戸大橋

世界一長い鉄道道路併用橋

瀬戸大橋は、本州の岡山県と四国の香川県を結ぶ連絡橋の一つで、島と島を結ぶ合計6つの橋をまとめた総称です。1978年に着工し、1988年の開通まで約10年かけて建設されました。橋梁部の合計は9,368メートル、高架部も含めると約13キロメートルとかなりの長さで、「世界一長い鉄道道路併用橋」としてギネス認定も受けています。竣工から30年近く経った2017年に日本の20世紀遺産に選出されるなど、日本国内では有名な観光スポットにもなっています。

瀬戸大橋

上段を車、下段を列車が走る二重構造となっていて、列車が走ると橋の中央部が数十センチたわむ構造です。さらに車が渋滞して重たい貨物列車が走るなど最大荷重時の想定では5メートル以上下がる計算です。これだけの変化に耐えるためには高度な計算と、工事品質が求められます。瀬戸大橋がいかに高度な橋梁建設技術によって建てられたかよく分かりますね。

瀬戸大橋は本州と四国をつなぐ連絡橋として最初に作られたルートです。それ以前は連絡船を使って行き来していましたが、昭和三十年に連絡船が沈没し、168名の犠牲者を出す大きな事故となりました。これをきっかけに橋の建設事業がスタートし、今日では毎日2万台をこえる車が安全に行き来できるようになっています。

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