建設キャリアアップシステムとは、建設業界で働く労働者を対象に、現状の技能や保有資格、社会保健の加入状況、就業履歴、現場経験等を登録する仕組みのこと。転職しても情報を蓄積させることができるため、労働者は客観的な基準にしたがった正当な評価のもとで働くことができるようになります。
2019年4月から、国土交通省が主導する形で同システムがスタート。運用は一般財団法人建設業振興基金が行っています。
建設キャリアアップシステムを導入した主な目的は、次の2つになります。
これまでの現場経験や現在の技能レベル、保有資格などに応じ、正当な給与・待遇を確保することを一つの目的としています。働き方改革の一環と捉えることもできるでしょう。
システムの運用を通じ、経験を積んで技能を向上させることで給与や待遇が上がることを若い労働者たちに伝え、仕事へのモチベーションアップにつなげます。モチベーションが上がることで資格取得者が増えるなど、建設業界全体のレベルアップも期待されます。
建設キャリアアップシステムの主なメリットについて、技能者側と建設事業者側のそれぞれの視点から見てみましょう。
メリットの多い建設キャリアアップシステムですが、現状ではまだ課題があります。2021年現在で明らかになっている主な課題を3点ほど見てみましょう。
運用開始から1年(2020年3月末)で100万人の登録を目指していましたが、実際には22万人で着地。2021年1月末現在でも46万人と、目標を大きく下回っています。システムの運営側と現場との温度差が浮き彫りになった格好でしょう。
当初の目標に対して登録者が非常に少ないことから、システムの運営母体である一般財団法人建設業振興基金では大幅な赤字となりました。2020年度末において100億円程度の赤字とされています。
この現状を背景にシステムの利用料金が値上がり。2020年10月からは、「現場利用料:3円→10円」「年間ID利用料:2,400円→11,400円」「事業者登録料:2倍」と、利用料金が著しく値上がりしました。
令和2年、全国建設業協会が建設キャリアアップシステムに関するアンケート調査を実施。得られた回答によると、全体の実に74%が、建設キャリアアップシステムにメリットを感じていないことが分かりました。
システムを有効に運用するためには、以上の課題を始めとした様々な課題を丁寧にクリアしていくことが必要となるでしょう。
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