※積算には、発注するための積算(官積算)と受注するための積算(工事積算)がありますが、ここでは工事積算について説明します。
工事の受注、会社の存続にも大きく影響する重要業務
工事積算とは、工事に必要な材料費や工事費などの項目を一つずつ拾い出し、工事全体の金額を算出することを指します。
実際に工事で使われる材料などの直接的な工事原価から、直接工事に関係しない間接工事費なども含めて詳細な計算を行います。現場だけでなく事務所で使う事務用品、各種交通費、会社の維持管理費など工事にかかる全ての項目を網羅するため、知識と経験が求められる仕事です。
見積とは、工事に必要となる原価に利益を乗せた金額の事です。工事の原価は積算で算出しますので、「積算に利益を乗せたもの」と言いかえることもできます。正確な見積金額を出すためには、積算の正確性が重要となります。
工事にかかる材料や工事を一つずつ積み上げていく積算に対し、見積は必ずしも全部の項目が網羅されているとは限りません。発注者が見やすいように、項目をまとめて簡易化している場合もあります。 基本的には「発注者に見せるための、工事にかかる総額」という認識で覚えておきましょう。
公共事業などの土木工事は入札によって受注する業者が決定します。工事にかかる入札金額を提出し、一番低い金額を出した業者が落札する仕組みです。積算が正確でなく、高すぎる金額を算出してしまうと工事を落札することはできません。逆に、安すぎる金額で落札してしまっては、十分な利益を出せなくなってしまうどころか、案件によっては失格し、受注できないこともあります。
また、入札ではない一般のプロジェクトの場合でも、発注元は複数の見積を取ることが一般的です。入札と同じように、高すぎれば選ばれず、安すぎれば利益が取れません。 適正な請負金額で工事を受注するためには、正確な積算が重要な役割となります。
積算のポジションで求められるのは単なる計算能力だけではありません。材料を拾い出すためには、どの現場にどの材料が適しているかといった実践的な知識も必要となります。コスト削減だけを考えてしまうと、現場での効率が悪くなり工期が伸びてしまい、結果的に予算オーバーとなってしまうかもしれません。土木工事に対する幅広い知識も求められます。
一つの計算ミスから大きなズレが生じ、工事を受注できない、原価が膨らんで利益が出ないといった問題に発展することもあります。かなりの責任を求められる仕事ですので、正確性と最後までやり遂げる責任感のある方が向いているといえるでしょう。
いくら細かく積算をしても、現場の状況によって多少のコスト増減は発生するものです。正確な積算で大きな仕事が予算通り竣工すれば、顧客や社内の仲間に感謝されることもあるでしょう。また、自分が積算した請負金額で工事を受注できれば、大きな達成感と実績を得ることもできます。責任のある仕事な分、やり遂げたときの感動は大きいでしょう。
積算の業務に必要なスキルとして、建設に関する知識が挙げられます。特に、建材や資材に関する情報は欠かすことができません。工事に使用される材料の基本的な知識をはじめ、価格相場や最新の情報を知識として取り入れておくことで、積算業務をおこなえます。
注意したい点としては、材料のコストに関する情報さえあれば工事積算ができる、というわけではないということ。積算業務は、原価を可能な範囲で抑えることも重要です。一方で、材料の使い勝手などについての理解もなければ、竣工後の工事において品質の低下、工期の遅れ、といった事態を招いてしまう要因となります。安い仕入れられるという理由だけでなく、なぜその材料が必要なのか、使用目的に沿ったものであるかといった視点が必要になるため、建設に関する幅広い知識を蓄えておくことが大切です。
積算業務は数字を扱う業務のため、高い計算能力を求められます。もちろん電子機器で計算することも可能ですが、加えて細かい数字を根気よく計算できる集中力が必要とされています。
建設工事の現場では、さまざまな場所で異なる種類の資材を使用します。同じ現場の工程であっても、コストの計算をしなければならない資材が複数あったり、反対に別な工程では必要でなかったりと、計算ミスが起きやすい複雑なものです。積算業務では、それらの資材を全て把握したうえで、もれなく計算できる能力が必要です。
積算業務で備わっていれば有利なスキルとして、コミュニケーション能力も挙げることができます。建材業者や施工業社といった取引先との調整が、建設工事のコストを算出する時点から求められるからです。
実際の工事現場では、積算の担当者が元請け業社や施工業社間のトラブルの仲裁役になることもあるため、立場が異なる様々な関係者をまとめあげる能力があれば、信頼されることでしょう。
積算業務では、所持しているスキルによって収入が異なりますが、なによりも経験を積むことが大事です。また、「建築積算士」や「建築積算士補」といった資格を取得することも、収入をアップさせることに役立ちます。
積算の仕事では、単に計算能力が高いだけが年収を上げる要因ではありません。さまざまな建設工事の積算に携わることで、スキルを磨いていきましょう。そうすれば、より高度な積算の仕事を担当できる規模の大きい企業に転職も目指せるようになります。
営利企業である建設会社にとって工事金額の算出はとても重要な仕事です。入札金額の根拠となり、ひいては会社の利益を左右することにもなりますから、正確な金額算定が必要です。
設計図書から工種ひとつひとつを頭の中で思い浮かべ最適な手順、材料数量、施工機械選定等を考慮し算定していきます。
はじめて行うにはハードルが高い作業です。同種・類似工事を参考にしながら算定していくことが最も効率的です。わからない場合は上司や先輩に教えを乞うことが大切です。
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