工事がおこなわれるのは、陸だけではありません。海や海岸、河川、ダムなどの現場でおこなわれる工事もあります。そのひとつが海岸工事です。一般的な土木・建設工事に比べると、あまり馴染みがないかもしれません。
こちらでは、海岸工事について、工事のねらいや特徴のほか、工事の種類、事前に実施する調査がいかに重要であるか、といった内容まとめています。土木施工管理技士として海岸工事にも関わっていきたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
外洋からの波が港に与える影響をおさえたり、高波が海岸を浸食しないように対策したり、あるいは高波や高潮・津波などによって引き起こされる災害を事前に防ぐための対策をすることを海岸工事といいます。堤防の設置や修繕などが、海岸工事のおもな施工内容です。
海岸の整備をするためには、潜水をして工事を進めなくてはならない場合もあります。そのため、命にかかわる危険性が存在しているため、海岸工事には厳しい法律がいくつか定められています。
場所打ちコンクリートやコンクリートブロック積みといった構造物を、海岸線に設置する工事です。津波や高潮、波浪などからの防御、そして陸部分への浸食をせきとめるために施工されるもの。まとめると、堤防工事は構造物で陸部分を守る工事、そして、護岸工事は海岸が浸食されないようにするための補強工事、ということになります。
海岸線の波打ち際に対して直角方向になるように、ブロックなどの構造物を設ける工事のことです。ブロックは一定間隔をおいて設置します。波が持つエネルギーを低下させて、砂浜の浸食をとめていくことがこの工事のねらいです。
人工的な浅瀬をつくる工事のことを、人工リーフ工事といいます。波打ち際からはなれた沖に、波打ち際のラインとできるだけ平行になるように、構造物(人工リーフ)を設けていきます。人工リーフは、消波や防波を目的とた構造物で、マウンド状になるように積み上げた砕石および自然石、そして表面の吸い出し防止材から成る構造物です。
また、人工リーフは海の美しい景観を損ねないようにするため、堤体が水面下に位置するように設置されています。このことから、人工リーフは「潜堤(せんてい)」と呼ばれることもあります。
浚渫船を使用し海底の土砂をすくいとっていく工事のことを、浚渫工事といいます。航路や泊地の水深を確保することが、この工事の目的です。浚渫工事は、ポンプ浚渫とグラブ浚渫の2種類があります。
ポンプ浚渫とは、土砂と海水を一緒に吸い上げる工法のこと。排砂管で吸い上げた土砂を捨て場へ運び出します。
グラブ浚渫とは、グラブバケットを装備した浚渫船を使用して海底の土砂のみをつかみ取る工法です。土砂は土運船で運び出します。
すでに浸食されてしまった海岸におこなう工事です。砂浜の消波能力が低下している状態なので、それを向上させるために、砂・土砂を供給していきます。養浜工事で使用される砂や土砂には、ダムやトンネルなどの公共工事によって生じた土や、浚渫工事で排出された土砂などが利用されることもあります。その場合、利用する土や土砂の選定は、学識者・漁業関係者たちによる協議で決定されます。
できるだけ安全に海岸工事を進めていくために、必要不可欠な要素のひとつとして挙げられるのが事前調査。例えば次のような詳細な注意事項が設けられています。
海岸工事は高い専門性が求められる土木工事です。また、その施工管理においては、複雑な原価管理や工程管理も求められます。決して簡単な仕事ではありませんが、社会的な意義の大きな海岸工事に土木施工管理技士として携わることで、とても大きなやりがいも感じられるはずです。安全に工事を進められるよう、充分な知識を身につけておくことが大切です。
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