PVD工法(プレファブリケーテッド・バーチカル・ドレーン工法)は、軟弱地盤から地下水を抜いて圧密沈下を促進させる工法のひとつです。この記事では、PVD工法の特徴や役割、施工手順、よく使われる現場を分かりやすく紹介します。
PVD工法とは、「プレファブリケーテッド・バーチカル・ドレーン工法(Prefabricated Vertical Drain)」の略で、軟弱地盤の中に人工的な排水路を垂直に挿入し、地盤の水を早く排出させる工法です。
この工法で使われるのは「ドレーン材」と呼ばれる薄くて柔らかい帯状の排水材。ビニールの帯に近いイメージで、透水性をもった素材(芯材+フィルター)でできています。ドレーン材を地盤の深くまでまっすぐ挿し込むことで、地中に縦方向の排水通路を人工的に形成し、水が地表へ向かって移動できるようにします。ドレーン材が挿入されているおかげで、地盤内の水は短い距離で抜けていき、結果的に地盤の強度が早く安定するのです。
もともと、軟弱地盤に排水通路をつくる工法としては「サンドドレーン工法」がよく使われていました。こちらは、砂を柱状に詰めてドレーンを形成する方法です。
しかし、サンドドレーン工法は砂を深くまで入れるため、大がかりな機械と材料、施工スペースが必要になります。それに比べてPVD工法は、工場であらかじめつくられた軽量なドレーン材を使うため、施工が早くて省スペース。コストや工期の面でも有利です。
PVD工法の最大の目的は、地盤の中にある「間隙水(かんげきすい)」を早く排出し、地盤沈下を抑えることです。軟弱地盤は、水分を多く含んだ柔らかい粘土層などで構成されていることが多く、そのまま盛土や構造物をのせると、「圧密沈下」と呼ばれるゆっくりとした地盤の沈み込みが長期間続いてしまいます。
PVD工法は、そうした地盤に対して、以下のような効果を発揮します。
PVD工法は、専用の施工機を使ってドレーン材を地盤の深部までまっすぐ挿入していく工法です。工程自体は比較的シンプルですが、正確な深さと間隔で設置することが求められます。
ここでは、一般的な施工の流れをわかりやすく解説します。
PVD工法は、大規模な構造物を建てる前に地盤を安定させたいとき、工期を短縮したいときなどに選ばれる工法です。ここでは、PVD工法がよく使われる代表的な現場を紹介します。
海を埋め立てて造成された空港や港湾エリアは、非常に水分を多く含んだ軟弱地盤で構成されています。そうした場所に滑走路や岸壁などの構造物をつくる際には、地盤が早く安定することが必須条件です。
PVD工法は、こうした現場で短期間に圧密を進めて地盤を締め固める目的で活用されています。
工業団地や大型倉庫などを新たに開発する場合、広い敷地を均一な状態に整える必要があります。もともと田畑だった土地や低湿地帯を転用するケースも多く、軟弱地盤の対策としてPVD工法が採用されることが増えています。
PVDなら、均一にドレーンを挿入することで全体の地盤特性をそろえやすく、不同沈下を防止しやすいのもメリットです。
線状に続くインフラ工事では、軟弱地盤の区間をどう安定させるかが大きな課題になります。特に道路や鉄道の盛土区間、あるいは河川堤防の改良工事などで、PVD工法が使われることが多くなっています。
盛土荷重による沈下を短期間で落ち着かせる必要がある場面では、PVD工法が効果的です。
PVD工法は、現場での実用性が高いだけでなく、土木施工管理技士の資格試験でも重要なテーマのひとつです。1級・2級どちらの試験でも、地盤改良工に関する問題が出題される傾向にあり、PVD工法は頻出項目のひとつとされています。
PVD工法に関する学科試験では、以下のような観点で問われることが多いです。
単なる用語の暗記だけでなく、「どのような現場で選ばれるのか」「なぜこの工法が効果的なのか」といった背景まで理解しておくことが得点アップのカギになります。
また、1級の実地試験では、実務経験をもとに論述する問題が出題されます。
現場でPVD工法を使用した経験があれば、「選定理由(軟弱地盤・工期短縮の必要性など)」「工法の効果や施工手順」「施工上の注意点(設置間隔・ドレーンのカット処理など)」といった内容を盛り込むことで、より実践的で説得力のある論文を書くことができるでしょう。
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