建物の土台作りとして基礎に使用する杭(基礎杭)にはいくつかの種類があります。このページでは、土木施工管理技士であれば知っておくべき基礎工事に使う杭の種類について、その特徴や用途をまとめていますので、参考にしてください。
基礎杭とは建物を建てる際に土台として使用される円柱状の柱であり、単純に「杭」と呼ばれることもあります。地面の上に建物を建てる場合、地盤の変形などの影響で建物が傾かないよう、地中に基礎杭を埋め込んでしっかりと固定し、その上に建物を載せることで安定した基礎を確保します。
基礎杭はその基礎作りに使用されるものであり、地盤の種類や建物の形状、さらには建物の重量などに応じて複数の種類の杭を使い分けることが重要です。適切な杭を選ぶことによって、建物の長期的な安全性と耐久性を確保することができます。
日本の建築史上で最も古い基礎杭は木製の木杭です。古くは鎌倉時代に橋を建てる際に使用された「旧相模川橋脚」が存在し、日本の建築史を知る資料として史跡指定されています。
旧相模川橋脚が発見されたきっかけは関東大震災による地面の崩落で、その際に土の中から現れたものです。今後も未発見の木杭や木杭を使用した建物の痕跡が発見される可能性があります。
木杭は現在も使用されることがありますが、地中の水分などの影響で品質が変化するため、基礎の主として使用されることはほとんどありません。しかし、杭の使用法のコンセプトは木杭から鋼杭やコンクリート杭に至るまで変わっておらず、木杭は歴史的な建築工事の基礎ともいえます。
木杭は主に小規模な建築物や仮設構造物の基礎として利用されることが多く、その手軽さから農業用ハウスなどにも使用されることがあります。ただし、耐久性に限界があるため、永久的な構造物には向いていません。
木杭に代わって普及した基礎杭が鋼鉄製の鋼杭です。日本の建築史において鋼杭が一般に使用されたのは1908年の高麗橋(大阪)とされており、当初は棒状の棒鋼杭が主流でした。その後、より安定的な形状・構造を持つH型鋼や鋼管杭が登場しました。
鋼杭は木杭と比較して高い耐久性を持ち、特に筒状の鋼杭は垂直方向にも水平方向にも優れた耐久力があります。また、鋼杭は地中へ打ち込む深さに合わせて現場で複数の鋼材を溶接して長くすることも特徴です。鋼杭はビルや鉄筋コンクリート造の建物の基礎として用いられます。
さらに、鋼杭は高い強度と耐久性を持つため、橋梁や高層ビルなどの大型建築物の基礎にも使用されることがあります。腐食防止のためのメンテナンスが必要ですが、その強度と信頼性から多くの現場で採用されています。
鋼杭に次いで誕生した基礎杭がコンクリート杭です。コンクリート杭には、工場で製造した杭を現場に運搬して打ち込むタイプと、現場で穴を開けてコンクリートを流し込んで基礎杭とするタイプの2種類があります。
工場で製造したコンクリート杭は現場での作業時間が短縮されるメリットがありますが、運搬コストがかかるうえ、運搬できる長さに制限があるため打ち込める深さが限定されます。一方、現場でコンクリートを流し込む方法は土の中で腐食するリスクが少なく、大規模なビルやマンションの基礎に適しています。
コンクリート杭は、耐久性に優れているだけでなく、形状や寸法を自由に設計できるため、多様な建築物に対応可能です。また、鉄筋を埋め込んだ鉄筋コンクリート杭も存在し、さらに強度を高めることができます。
場所打ち杭とは、実際に工事を行う場所で杭を製作して打ち込む工法です。場所打ち杭は工場で製作された杭を現場でさらに強固にして使用するため、耐久性が向上します。また現場で杭の長さを調節できるため、状況に応じて杭のコントロールがしやすくなります。
反面、現場で杭を製作するため労力と時間がかかり、コストや工期を考慮する必要があります。特殊な地盤や大きな支持層を利用する現場では、場所打ち杭が基本となります。
場所打ち杭は、大規模な建築プロジェクトや特定の地盤条件に対応するために使用されることが多く、例えば地下鉄工事や高層ビルの建設などで利用されることがあります。この方法は、地盤の特性に合わせた柔軟な対応が可能であり、長期的な耐久性を確保するのに適しています。
既製杭は工場であらかじめ製造されている杭で、現場に運搬してそのまま地中に打ち込むタイプです。現場での杭作り工程を省略でき、工期を短縮できる点がメリットです。また、既製杭は工場で製造されるため、作業員の技術や現場の環境に左右されず、均一な品質を確保できます。
一方、既製杭は製造場所から工事現場まで運搬するため輸送コストがかかり、運搬可能な長さに制限があります。状況によっては、現場で既製杭を接合して延長することもあります。
既製杭は、一般的な建築物やインフラ整備など、多岐にわたる用途に対応しており、特に住宅地の開発や中小規模の建築プロジェクトで広く使用されています。品質の安定性と施工の効率性から、多くの建設現場で重宝されています。
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