土木工事で使われるコンクリートには「セメント」が欠かせません。セメントには多くの種類があり、土木施工管理技士は、それぞれの特徴や用途に合わせた適切なセメントの選択することが求められます。ここでは、知っておくべきセメントの種類について詳しく解説します。
セメントは大きく4つの区分に分けられますが、その中で最も基本的なものが「ポルトランドセメント」です。ポルトランドセメントはさらに6つの種類と低アルカリ形が存在し、使用する際には各々の特徴と用途を理解することが重要です。
ポルトランドセメントはセメントの原料として、クリンカーの配合割合を調整し、硬化速度などを調整したものです。普通ポルトランドセメントはその中で最も一般的なタイプで、広く一般的な構造物に使用されています。
早強ポルトランドセメントは、セメントクリンカーの配合を変更し、ケイ酸三カルシウムの割合を高めることで、普通ポルトランドセメントよりも早く硬化し強度を獲得しやすいようにしたものです。このセメントは短期間で強度を得る必要がある工事現場や、寒冷地のようにセメントが固まりにくい環境で使用されます。
超早強ポルトランドセメントは、早強ポルトランドセメントよりさらに早く強度を発現するように設計されています。普通ポルトランドセメントに比べ、約7分の1の期間で所定の強度を得ることが可能です。緊急工事など、時間が限られている現場での使用が代表的です。
中庸熱ポルトランドセメントは、ケイ酸三カルシウムやアルミン酸三カルシウムの含有量を減らすことで水和熱を抑えたセメントです。そのため初期強度は小さいものの、長期的には強度が向上し、密実化するという特性があります。また、硫酸塩への抵抗性が高い点も特徴です。このセメントは、マスコンクリートなどで多く使用されます。
低熱ポルトランドセメントは、ケイ酸二カルシウムを40%以上含むようにクリンカー配合を調整し、中庸熱ポルトランドセメントよりもさらに水和熱を低減したセメントです。1997年に追加された新しい種類のセメントで、初期強度は低いものの、低熱性や長期的な強度に優れています。マスコンクリートや高流動コンクリートなどで利用されます。
耐硫酸塩ポルトランドセメントは、アルミン酸三カルシウムの含有量を4%以下に抑え、硫酸塩に対する耐性を高めたセメントです。このセメントは、硫酸塩による劣化が懸念される温泉地などで使用されるコンクリート構造物に用いられます。
低アルカリ形ポルトランドセメントは、セメント中のアルカリ含有量を0.6%以下に抑えたセメントで、アルカリ骨材反応のリスクを低減するために使用されます。ポルトランドセメントの6種類すべてに、低アルカリタイプが存在します。
混合セメントは、ポルトランドセメントにさまざまな混合材を加えて使用するセメントです。主に「高炉セメント」「シリカセメント」「フライアッシュセメント」の3種類があり、それぞれ混合材の量によりA・B・Cのタイプに分類されます。
高炉セメントは、製鉄所で生成される高炉スラグの微粉末をポルトランドセメントに混ぜたセメントです。このセメントは長期強度に優れ、水密性や耐海水性、化学抵抗性にも優れています。そのため、湾岸工事や河川工事など水に接する環境での使用に適しています。ただし、硬化速度が遅いため、初期の養生が重要です。使用する高炉スラグの量によってA・B・Cに分類されます。
シリカセメントは、ケイ石の粉末など二酸化ケイ素を60%以上含むシリカ質混合材を使用した混合セメントです。強度の発現に時間がかかるものの、耐薬品性に優れています。シリカフュームの配合量によりA・B・Cの順で分類されます。
フライアッシュセメントは、火力発電所で発生する石炭灰を混合材として使用したセメントです。フライアッシュは微粉末であり、ポルトランドセメントと混合することでワーカビリティを向上させ、水和熱が低く、乾燥収縮を抑える効果があります。マスコンクリートや長期強度を求められる場所に適しています。フライアッシュの配合量によってA・B・Cに分類されます。
エコセメントは、都市部で発生するゴミ焼却灰などを利用して製造される、環境負荷の軽減を目指したセメントです。ポルトランドセメントと同等の強度や性能を持っていますが、廃棄物が原料であるため、塩素の含有量が多く、高強度コンクリートには使用されません。JIS規格により、製造量1トンあたり500kg以上の廃棄物を使用することが求められています。
普通エコセメントは、普通ポルトランドセメントと同等の性質を持ち、鉄筋コンクリートや無筋コンクリートの構造物に使用可能です。製造時に脱塩素化されており、塩化物イオン量は0.1%以下です。
速硬エコセメントは、塩化物イオン量が0.5%から1.5%の範囲にあり、塩素成分の影響で硬化速度が向上しています。無筋コンクリートの構造物に使用されます。
ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメントのほかにも「特殊セメント」と呼ばれるセメントがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。
代表的な特殊セメントは以下の通りです。
白色ポルトランドセメントは、鉄分を少なくして白くしたセメントです。そのため、好きな色に着色することが可能で、特にデザイン性が求められる建築物やモニュメント、景観に配慮した公共施設で使用されることが多いです。
アルミナセメントは、アルミン酸カルシウムを多く含み、早く硬化する特性があります。寒冷地での緊急工事や、高温環境での使用に適しています。また、耐火性にも優れているため、高温にさらされる設備の基礎などにも使われます。また、化学的な耐性もあり、特殊な用途での利用が進んでいます。
超速硬セメントは、アルミナセメントよりもさらに早く硬化し、長期的な強度にも優れています。交通量が多い道路の補修など、早急に交通を再開する必要がある場合に利用されます。
グラウト用セメントは、湧き水や地盤崩壊を防ぐために使われます。地盤の強化や漏水防止に役立ち、地盤改良やトンネルの補強、ダムの修復、地下水の流入防止など、さまざまな場面で活躍しています。
油井セメントは、高温・高圧環境でも安定した性能を発揮するセメントです。油田やガス田での掘削時にパイプを固定するために使われます。
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