建設や土木の現場では、「モーメント」という言葉を耳にする機会が多くあります。なんとなく「力のことだろう」と理解していても、人に説明しようとすると難しく感じる方も少なくありません。
モーメントは、土木施工管理技士を目指す方にとっても、すでに現場で働く技士の方にとっても欠かせない“力の考え方”です。この記事ではモーメントの基本的な意味から種類、計算の考え方、そして現場でどのように役立つのかまで、分かりやすく整理して紹介します。
モーメントとは、支点にかかる力によって物体が回転しようとする作用を指します。力には「押す」「引く」といった一方向のものだけでなく、“回そうとする力”があり、これがモーメントです。
日常の中にも、モーメントは多く潜んでいます。ドアを押して開けるとき、スパナでボルトを緩めるとき、子どもがシーソーに乗っているときなど、これらはすべて「力 × 支点からの距離」によって生まれる作用です。同じ力でも支点からの距離が長いほど、大きな回転作用を生むのが特徴です。
建設や土木の現場で扱うモーメントには、主に4つの種類があります。ここでは、その概要と単位・計算の考え方を整理します。
物体に外から加わる力が、回転軸や支点に対してどれだけ“回そうとする作用”を及ぼすかを表す値です。構造物の安定性を判断する基本となる概念で、最もよく使われるモーメントでもあります。
外力を受けた部材の内部で生じる“曲げようとする力”です。梁がしなっている部分などには大きな曲げモーメントが働き、破損やたわみが起きやすくなります。「力のモーメント=外力」、「曲げモーメント=内力」という違いを押さえておくと理解しやすくなります。
互いに逆向きの平行な2つの力が生み出す回転作用のことです。たとえば車のハンドルを両手で回すとき、一方の手が下向き、もう一方が上向きに力を加えることで、偶力が生じて回転が生まれます。
部材が「どれくらい曲がりにくいか」を示す値です。H鋼やI型鋼が強い理由は、この断面二次モーメントが大きいためです。たわみや剛性、振動、座屈など、構造に関わるさまざまな場面で非常に重要になります。
ショベルやクレーンの作業では、機体の姿勢や荷重の位置によってバランスが大きく変わります。アームを伸ばした際に前のめりになりそうな瞬間や、吊り荷の角度が変わっただけで不安定になる状況は、すべてモーメントの影響です。
どの方向にどれだけ“回そうとする力”が働いているのかを理解していると、危険な姿勢を早めに察知し、安全な作業計画に反映しやすくなります。
切梁や山留め、支保工、擁壁などの安定性を確認する際も、モーメントの考え方は欠かせません。外から加わる力と、部材内部で生じる力のバランスによって、どちら側に倒れやすいかが変わるためです。
モーメントを基礎に考えることで、補強が必要な箇所や注意すべき状態を早い段階で判断できるようになります。
フェンスや看板が風で倒れそうになる場面や、足場が揺れやすくなる状況にもモーメントが深く関わっています。風がどこからどれほどの力で吹いているか、支点からの距離を含めてイメージできるようになると、現場の弱点が見えやすくなり、安全対策の検討もしやすくなります。
モーメントを難しく感じる方が多い理由のひとつは、「力」と「距離」と「回転」の関係を頭の中だけで整理しようとすると混乱しやすい点にあります。
支点がどこにあるのか、力はどちら向きに働くのか、距離はどこからどこまでを指すのかなど、複数の要素が重なると、文章や公式だけではイメージが追いつかなくなることがあるためです。
対策としては、図を描いて状況を整理することがとても効果的です。紙の上に支点を描き、力の向きを矢印で示すだけで、頭の中の“もやもや”がすぐ形になります。
どちら向きに回転しようとしているかが視覚的に分かるため、距離のとらえ方も自然に理解できるようになります。
さらに、矢印の向きや長さを変えてみると、「力が大きくなるとどう変わるのか」「距離が長いとどれだけ作用が強くなるのか」といった感覚もつかみやすくなります。計算よりも先に“状況を見える化する”ことが、結果として計算問題にも強くなる近道です。
モーメントは抽象的に考えるほど難しく感じますが、図を描きながら整理すると「あ、こういうことだったのか」と腑に落ちやすい分野だといえます。
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