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土質工学

土質工学とは

令和6年度以降の土木施工管理技士試験では、新たに「土質工学」が出題分野として加わりました。

この土質工学とは、土の性質や挙動を工学的に扱う分野です。土木工学の一分野として位置づけられており、構造物そのものではなく、それを支える「地盤」に注目するのが大きな特徴です。

道路や橋、擁壁、建物など、土木構造物はすべて地盤の上につくられます。どれだけ優れた設計や施工を行っても、その下にある地盤が不安定であれば、構造物の安全性は確保できません。

土質工学は、そうした地盤の性質を理解し、「この地盤はどれくらいの荷重に耐えられるのか」「時間の経過とともに沈下する可能性はないか」といった点を判断するための基礎となる学問です。

なぜ土質工学が重要なのか

構造物はすべて「地盤の上」に成り立っている

土木構造物は、必ず地盤から影響を受けます。同じ設計の構造物でも、硬い地盤の上につくる場合と軟らかい地盤の上につくる場合とでは、施工方法や注意点が大きく変わります。地盤が弱いまま工事を進めると、不同沈下や斜面の崩壊、構造物の変形や損傷といった問題が起こる可能性があります。

土質工学は、こうしたトラブルを防ぐために、地盤の状態を事前に把握し、適切な対策を考えるための判断材料を与えてくれる分野です。

日本の土木工事と土質工学の関係

日本は、地震や豪雨が多く、地形も複雑な国です。軟弱地盤や盛土、地下水位の高い地域も多く、地盤条件が工事に与える影響は決して小さくありません。

そのため、日本の土木工事では「地盤をどう扱うか」が非常に重要なテーマとなり、土質工学の知識が必要とされる場面が数多くあります。

土木施工管理技士試験で土質工学が重視されるようになった背景にも、こうした現場条件と密接に関わる分野である、という理由があります。

土質工学のポイント

土の三相とは

土質工学を理解するうえでまず押さえておきたいのが、土は一つの物質ではなく、複数の要素から成り立っているという考え方です。土質工学では、土を「土粒子(固体)・水(液体)・空気(気体)」の三つの要素からなる集合体として捉えます。これを「土の三相」と呼びます。

同じ土であっても、水を多く含めば軟らかくなり、水が少なければ締まりやすくなります。また、空気の割合が変わることで、沈みやすさや安定性も変化します。このように、土の性質は、含まれる水や空気の状態によって大きく左右されるという点が、土質工学の基本的な考え方です。

有効応力とは

地盤の中では、構造物の重さや土そのものの重さによって力がかかっています。ただし、その力がすべて土の粒子同士に直接伝わっているわけではありません。土のすき間には水が存在しており、その水にも圧力(間隙水圧)がかかります。この水が一部の力を受け持つことで、土粒子同士が実際に押し合っている力が決まります。

この「土粒子同士に伝わっている力」を有効応力と呼びます。

土の強さや変形のしやすさは、この有効応力によって左右されると考えられています。たとえば、地下水位が高く、水を多く含んだ地盤では、水が力を受け持つ分、有効応力が小さくなります。その結果、地盤は不安定になりやすく、沈下や崩壊が起こりやすくなるのです。

圧密沈下と地盤の変形

構造物を地盤の上に築くと、地盤には長期間にわたって荷重がかかり続けます。その結果として起こる代表的な現象が、圧密沈下です。

圧密沈下とは、土の中のすき間にある水が、時間をかけて外へ押し出されることで、地盤全体が徐々に沈んでいく現象を指します。特に、粘土質の地盤では、水が抜けるまでに時間がかかるため、施工後しばらくしてから沈下が進行することがあります。

このような沈下を想定せずに工事を進めると、完成後に構造物が傾いたり、ひび割れが発生したりするおそれがあります。土質工学では、「どの程度沈下するのか」「どれくらいの期間で進行するのか」を予測し、必要に応じて地盤改良や施工方法の検討を行います。

土質工学の試験対策について

令和6年度(2024年度)の土木施工管理技士試験では、これまでになかった新しい分野として「工学の基礎」が導入されました。令和6年度および令和7年度には、土質工学の問題が2問、必須回答として出題されています。

令和6年度の出題内容

令和6年度の第一次検定では、工学基礎分野として5問が必須出題され、そのうち土質工学が2問を占めました。

この土質工学に関する2問は、1問目が土の三相構造(固体・水・空気)に関する問題、2問目が粒径加積曲線と三角座標に関する問題で、いずれも基礎的な理解を問う内容でした。

令和7年度の出題内容

令和7年度の第一次検定でも、工学基礎分野の出題構成は、令和6年度と同じく、土質工学2問・構造力学2問・水理学1問となっていました。土質工学についても引き続き2問が出題されており、内容は「土の構成」と「コンシステンシー限界」がテーマとなりました。

土の構成に関する問題は、令和6年度や2級土木施工管理技士試験の内容を復習していれば対応できるレベルで、新しい理論を問うものではありませんでした。また、コンシステンシー限界についても、土質試験としての基本的な考え方を理解していれば解ける問題でした。

試験から見える『土質工学の位置づけ』

令和6年度・令和7年度の出題内容を振り返ると、土木施工管理技士試験における土質工学は、高度な専門分野としてではなく、施工管理に必要な工学の基礎として位置づけられていることが分かります。

複雑な計算問題や大学レベルの理論よりも、土がどのような構成で成り立っているのか、水分や粒度によって性質がどのように変わるのか、試験や図表が何を示しているのかといった、考え方そのものの理解が重視されているのが特徴です。

そのため土質工学を学ぶ際は、「公式を覚える」ことに意識を向けるよりも「土をどういう視点で捉える学問なのか」を押さえることが、試験対策としても効果的だといえるでしょう。

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