スランプ試験とは、生コンクリートのやわらかさや流動性の程度を確認するための試験です。生コン工場で製造され、現場に搬入された生コンクリート(レディーミクストコンクリート)を対象に、品質管理の一環として行われます。
試験では、スランプコーンと呼ばれる円すい台形の器具に生コンクリートを詰め、コーンを引き上げたときに、コンクリートがどの程度下がるかを測定します。このときに生じる中央部の下がり量が「スランプ値」です。
スランプ試験は、日本産業規格(JIS)で方法が定められており、現場で行う品質管理試験の中でも、特に基本的で重要な位置づけにあります。
スランプ試験の目的は、生コンクリートがその工事に適した施工性を持っているかを確認することです。コンクリート工事では、運搬、打込み、締固めといった一連の作業を、無理なく、確実に行う必要があります。そのためには、硬すぎず、かといってやわらかすぎない、適切な状態のコンクリートであることが重要です。
スランプ試験によって確認しているのは、こうした施工のしやすさ、いわゆるワーカビリティーの目安です。現場で扱いにくい状態のコンクリートをそのまま使用してしまうと、締固め不足や材料分離などが起こり、構造物の品質に影響を及ぼす可能性があります。
またスランプ試験は、「設計で想定された配合どおりのコンクリートが、きちんと現場に届いているか」を確認する意味でも重要な役割を果たしています。
スランプ試験では、スランプコーンと呼ばれる専用の器具に生コンクリートを詰め、引き上げたときにどの程度沈み下がるかを測定します。この沈み下がった量を「スランプ値」といいます。
スランプ値は、数値が大きいほどコンクリートがやわらかく、流動性が高い状態であることを示します。反対にスランプ値が小さい場合は、コンクリートが硬く、流れにくい状態だと判断できます。
やわらかいコンクリートは、型枠への充填や締固めがしやすく、作業性が良いと感じられる場面も多いでしょう。しかし、やわらかすぎると材料分離が起こりやすくなり、結果として品質の低下につながることもあります。
このように、スランプ値は「大きければ良い」「小さければ良い」という単純なものではなく、施工条件に合った適切な範囲に収まっているかどうかが重要になります。
スランプ値は、コンクリートの強度そのものを示す数値ではありません。あくまで、施工のしやすさ、いわゆるワーカビリティーを確認するための指標です。
試験対策や実務の中で、「スランプが大きいから強度が高い」「スランプが小さいから良くないコンクリート」といった誤解をしてしまうことがありますが、これは正しくありません。
コンクリートの品質は、強度、耐久性、施工性など、複数の要素によって評価されます。スランプ値はその中の「施工性」に関わる一つの目安であり、品質全体を判断するための指標の一部にすぎない、という位置づけになります。
スランプ試験は、JISで試験方法が定められており、現場ではその手順に沿って行われます。
まず水平が確保された平板の上に、スランプコーンと呼ばれる円すい台形の器具を設置します。このとき、平板が傾いていると正しい測定ができないため、水平を保つことが重要です。
次に、スランプコーンと呼ばれる円すい台形の器具の中に生コンクリートを詰めていきます。
このとき、コンクリートは一度に入れるのではなく、3層に分けて投入するのがポイント。各層ごとに、突き棒を使って所定の回数突き、締め固めを行います。この作業によって、コンクリート内部の空隙を減らし、実際の施工に近い状態を再現します。
3層目まで詰め終え、上面をならした後、スランプコーンを鉛直方向に静かに引き上げます。すると、コンクリートは自重で少しずつ沈み下がります。このときの上端から中央部までの下がり量を測定したものがスランプ値です。スランプ値の測定は0.5cm単位で行います。
スランプ試験は、単に数値を測れば終わりという試験ではありません。正しい状態で測定できているかどうかを見極めることが、とても重要です。
まず注意したいのが、コーンを引き上げた後のコンクリートの形状です。コンクリートが大きく崩れてしまったり、明らかに一方向へ偏って倒れたりした場合、その測定結果は適切とはいえません。このようなケースでは、再試験が必要になります。
また、試験中の作業時間にも注意が必要です。コンクリートは時間の経過とともに性状が変化するため、詰め始めてから測定が終わるまでを、できるだけ速やかに行うことが求められます。
数値の読み取りについても、注意点があります。スランプ値は「平板からの高さ」ではなく、スランプコーン上端からの下がり量を測定します。この点は、試験でもよく問われるポイントの一つです。
さらに、スランプ値だけでコンクリートの良し悪しを判断しないことも大切です。スランプ値が規定範囲内であっても、分離が見られる場合や、施工に支障が出る状態であれば、そのまま使用することが適切とは限りません。
土木施工管理技士試験では、スランプ試験そのものの細かい手順よりも、「スランプ試験が何を目的としているのか」「スランプ値をどう考えるべきか」といった考え方を問う問題が多く出題されます。
たとえば、「スランプ値はコンクリートの強度を示す指標である」「スランプが大きいほど、良質なコンクリートである」といった表現は、誤りとして出題されやすい代表例です。また、測定方法に関しては「スランプ値は0.5cm単位で測定する」「平板からの高さではなく、下がり量を測る」といった点を理解しているかどうかがポイントになります。
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