火薬類取締法と聞くと、「発破作業を担当する専門業者が知っておくべき法律」「自分は直接火薬を扱わないから関係ない」と感じる方も多いかもしれません。
たしかに、火薬や雷管を実際に取り扱うのは、資格を持った作業者や専門業者が中心です。しかし、土木施工管理技士として現場に関わる以上、火薬類取締法をまったく知らなくていいということはありません。
発破工事を伴う現場では、工程の組み立てや安全管理、作業範囲の設定、関係者への周知など、施工管理技士が確認・調整する役割が多くあります。この記事では、土木施工管理技士が押さえておきたい「火薬類取締法」のポイントをまとめました。
火薬類取締法は、火薬類の製造・販売・貯蔵・運搬・消費・取扱いなどを規制することで、火薬類による事故や災害を防ぎ、公共の安全を確保するための法律です。
土木工事の現場で扱う火薬類は、便利で強力な反面、使い方を誤れば重大な事故につながる危険性を持っています。そのため、火薬類取締法では非常に細かいルールが定められています。
火薬類取締法は、事故を起こさないための法律です。一度事故が起きれば、人命に関わる重大な被害につながるからこそ、事前の管理や確認が徹底されているのです。
火薬類取締法は、すべての土木工事に関係する法律ではありません。では、土木工事のなかで火薬類取締法が関係してくるのは、具体的にどのような場面なのでしょうか。
火薬類取締法のなかでも特に混乱しやすいのが、火薬類取扱所・火工所・火薬庫の違いです。名前が似ていることもあり、「結局どこで何をしていいのか分からない」という状態になりがちですが、それぞれには明確な役割があります。
火薬庫は、作業の合間に一時的に使用する場所ではなく、火薬類を長期間、安全に保管するための施設です。原則として、火薬類は最終的に火薬庫へ返納されます。
火薬庫は現場から離れた場所に設置されることも多く、構造や保安距離についてもしい基準が設けられています。
火薬類取扱所は、消費場所において、火薬類の管理や発破の準備を行うための場所です。火薬庫から取り出した火薬類を、すぐに発破場所へ持ち込めない場合などに、一時的に管理・準備を行うために設けられます。
「火薬類の受払い管理」「消費残数量の記録」「発破前の準備作業」などを行う場所であり、盗難や火災を防ぐための構造や管理体制が求められます。
ただし、雷管を取り付けるなどの作業は、原則として火工所で行うことになります。この線引きを理解しておくと、現場内の動線や役割分担が整理しやすくなります。
火工所は、薬包に雷管や導火線を取り付ける作業を行うための場所です。発破作業の中でも特に危険性が高い工程を扱うため、設置場所や管理体制について厳しいルールが定められています。
火工所では、「原則として見張人を常時配置する」「不要な火薬類を持ち込まない」「作業場所以外で雷管の取り付けを行わない」といった点が求められます。
火薬類の消費量が少ない場合、取扱所を設けなくてよいケースもあります。ただし、その条件は細かく定められており、単に「量が少ない」という理由だけで判断してよいわけではありません。
試験でも実務でも「少量だから大丈夫」という思い込みが、ミスにつながりやすいポイントです。
火工所や火薬類取扱所に火薬類を存置する場合、見張人は「必要に応じて」ではなく、原則として常時配置する必要があります。
試験でもよく出るポイントですが、実務でも軽視されやすい部分です。「少しの間だけだから」という判断が、大きな事故につながる可能性があるため、この点は特に注意が必要です。
火薬類は、衝撃・摩擦・熱・静電気といった要因によって、意図せず爆発・発火する危険性があります。そのため、保管や管理の方法については厳格なルールが定められています。
火薬類取締法では「金属を避けた容器を使う」「火薬と火工品を分けて保管する」「一度に多量を置かない」といったルールがありますが、これらはすべて、「連鎖的な事故を防ぐため」という考え方に基づいています。
発破作業というと、点火の瞬間や装てん作業に意識が向きがちですが、火薬類取締法では、それ以前とそれ以後の安全確保も重視されています。
たとえば、発破作業前には「発破孔や岩盤の事前確認」「装てん方法の確認」が必要です。また発破が終了した後も、すぐに人を立ち入らせてよいわけではありません。有害ガスの危険がなくなり、発破場所の安全が確認されてから、初めて次の作業に移ります。
この確認を怠ると、二次災害につながるおそれがあります。
火薬類を運搬する際は、衝撃や摩擦を与えないことが大原則です。火薬・爆薬・火工品は、それぞれ異なる容器に収納し、丈夫で安全な容器を使用します。
これは、万が一事故が起きた場合でも、被害を最小限に抑えるための措置です。
消費場所や火薬類取扱所に火薬類を存置できる量は、一日の消費見込量以下と定められています。これは、万が一事故が起きた場合の被害を最小限に抑えるためです。
「余ったからそのまま置いておく」という判断はできず、原則として、作業終了後は所定の場所へ返納する必要があります。
電気雷管を使用する場合、電波や漏電による誤作動を防ぐため、特に慎重な取り扱いが求められます。そのため、「電波を発する機器を近づけない」「動力線や電灯線から距離を取る」といったルールが設けられています。
施工管理技士としては、現場内の無線機や電気設備との位置関係にも、注意を払う必要があります。
火薬類取締法は、1級・2級土木施工管理技士試験の法規分野で、毎年のように出題されるテーマです。試験では、見張人の配置や、火工所・火薬類取扱所の役割、ダイナマイトの取扱いなど、細かいルールを問われることが多くあります。
ただ、条文を丸暗記しようとすると、覚えることが多く、混乱しやすいのも事実です。
これまで見てきたように、火薬類取締法は、現場での安全確保を前提に作られた法律です。「このルールは、どんな事故を防ぐためのものなのか」「現場では、どんな場面に当てはまるのか」という視点で整理・理解しておくと、知識の定着度が大きく変わってきます。
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