ダムや大規模な基礎構造物などで使用される「マスコンクリート」は、一般的なコンクリートとは少し異なる配慮が求められる材料です。特に問題となるのが、セメントの水和熱による温度上昇と、それに伴うひび割れです。
この記事では、マスコンクリートの特徴やひび割れ対策、施工管理のポイントを解説します。
マスコンクリートとは、断面寸法が大きく、セメントの水和熱による温度上昇が問題となるコンクリートのことをいいます。明確な寸法の基準が一律に定められているわけではありませんが、部材厚が大きく、内部に発生した熱が外部へ逃げにくい構造物が対象となります。
コンクリートは、セメントが水と反応することで硬化します。この反応を「水和」といい、その際に熱が発生します。通常の部材であれば、この熱は比較的早く外部へ放散されますが、断面が大きい場合には内部に熱がこもりやすくなります。その結果、内部と表面との間に温度差が生じ、引張応力が発生することで温度ひび割れにつながるおそれがあります。このように、水和熱による温度管理が特に重要となるコンクリートを、マスコンクリートと呼びます。
ダム本体や大規模な橋台・橋脚、厚みのある基礎スラブなどが代表的な例です。単に「大きなコンクリート」というだけでなく、温度上昇とひび割れへの対策が必要になる点が、マスコンクリートの大きな特徴といえます。
マスコンクリートの最大の特徴は、水和熱による温度変化が構造物の品質に大きく影響する点にあります。
コンクリートは、セメントと水が反応する「水和」によって硬化します。このとき熱が発生しますが、断面が大きいマスコンクリートでは、その熱が内部にこもりやすくなります。
特に部材の中心部は外気に触れないため、温度が高い状態がしばらく続きます。一般的な部材と比べて内部温度の上昇幅が大きくなる点が、大きな特徴です。
内部に熱がこもる一方で、表面は外気の影響を受けて徐々に冷えていきます。その結果、内部と表面との間に温度差が生じます。
この温度差が大きくなると、コンクリート内部に引張応力が発生します。コンクリートは圧縮には強いものの、引張には弱い材料であるため、応力に耐えきれずひび割れが発生するおそれがあります。
マスコンクリートでは、上記の温度差や温度降下による収縮の影響で「温度ひび割れ」が生じやすくなります。これは、乾燥収縮ひび割れとは異なり、水和熱に起因するひび割れです。
温度ひび割れは、構造物の耐久性や水密性に影響を与える可能性があるため、設計段階から対策が検討されます。施工段階でも温度管理や養生方法が重要となります。
マスコンクリートは、一度に大量のコンクリートを打設することが多いため、打設リフトの高さや施工順序が内部温度の変化に影響します。
そのため、通常のコンクリート以上に、事前の計画や温度予測が重要になります。単に「大きい部材」というだけでなく、温度変化を前提に施工を考える必要がある点も特徴のひとつです。
マスコンクリートにおけるひび割れ対策は、水和熱による温度上昇と、その後の温度差をいかに小さく抑えるかが重要になります。対策は大きく分けて、「発熱を抑える」「温度差を小さくする」「発生する応力を低減する」という視点で整理できます。
まず重要なのが、コンクリート自体の発熱量を抑えることです。代表的な方法として、低熱ポルトランドセメントの使用や、高炉セメントなど水和熱の小さいセメントを採用することが挙げられます。
また、単位セメント量を必要以上に増やさないことも基本です。設計強度を満たしつつ、発熱を抑える配合を検討することが、温度上昇の抑制につながります。
打設時のコンクリート温度をできるだけ低く抑えることも有効です。たとえば、骨材を日陰に保管する、練混ぜ水を冷却するなどの方法があります。
大規模構造物では、あらかじめ冷却した材料を用いる「プレクーリング」や、打設後に冷却水を循環させる「パイプクーリング」が採用されることもあります。これらは内部温度の上昇を抑え、温度差を小さくすることを目的とした対策です。
内部と表面の温度差を抑えるためには、適切な養生が欠かせません。特に表面が急激に冷えると温度差が大きくなるため、保温養生によって緩やかに温度を下げることが重要です。
保温マットの使用や型枠の存置期間の調整などにより、急激な温度変化を防ぎます。冬期施工では外気温の影響が大きくなるため、より慎重な対応が求められます。
打設リフトの高さや施工順序を調整することも、ひび割れ対策のひとつです。一度に打設する量を適切に計画することで、内部温度の急激な上昇を抑えることができます。
温度解析を行い、あらかじめ温度変化を予測したうえで施工計画を立てることも、近年では一般的になっています。
マスコンクリートでは、温度ひび割れをいかに抑制するかが施工管理の大きなテーマとなります。材料の選定や配合だけでなく、打設計画や養生方法まで含めた総合的な管理が求められます。ここでは、施工管理技士として押さえておきたい主なポイントを整理します。
マスコンクリートでは、内部温度の把握が欠かせません。打設後のコンクリート内部に温度計を設置し、時間の経過に伴う温度変化を確認します。
重要なのは、単に最高温度を知ることだけではなく、内部と表面の温度差や、温度降下の速度を把握することです。あらかじめ管理基準を設定し、計測値がその範囲内に収まっているかを確認することが、ひび割れ防止につながります。
一度に打設する高さや施工の順序は、温度上昇の状況に大きく影響します。リフト高さが大きすぎると内部温度が上昇しやすくなるため、事前に適切な計画を立てることが重要です。
必要に応じて温度解析を行い、予測値を踏まえて打設方法を検討します。施工管理者は、設計意図と現場条件の両方を考慮しながら、無理のない施工計画を組み立てる姿勢が求められます。
表面の急激な冷却は温度差を拡大させる要因となるため、保温養生の計画と実施は非常に重要です。保温マットの設置や型枠の存置期間の調整などにより、コンクリートの温度を緩やかに低下させます。
外気温が低い時期や昼夜の寒暖差が大きい条件では、特に注意が必要です。養生は打設後すぐに始まる管理項目であり、施工管理の重要な責任範囲といえます。
万が一ひび割れが発生した場合には、その原因を整理し、構造性能や耐久性への影響を評価する必要があります。ひび割れの幅や位置を記録し、必要に応じて補修方法を検討します。また、温度計測結果や打設記録、養生状況などのデータを整理しておくことは、品質管理の観点からも重要です。日々の記録が、適切な判断や説明責任を支える基礎になります。
マスコンクリートの施工管理では、「温度を把握すること」「計画段階から対策を組み込むこと」「記録を残すこと」が大きな柱となります。材料の特性を理解し、現場全体を見渡しながら管理していく姿勢が、品質確保につながります。
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